卒業 ページ16
高校が決まった数週間後、私たちは中学を卒業した。
生徒用玄関の前では泣いたであろう、目が赤い状態で写真を撮っている人達ばかりだった。
「Aとろ!」と女の子の友達に携帯を持ったまま手招きされると、「もちろん」と元気よく返して、自分もその場へ早足で近寄った。
約2年一緒に過ごした友達。
高校が別になる人も多かったし、2年は長いようでとても短くて、その短い期間の中にたくさんの思い出が出来た。
だからその分、込み上げてくるものも大きかった。
一通り友達と写真を撮り終えると、後ろから私の名前を呼ぶ声がした。
「A今から暇だろ?海でも行こーぜ」
声の主は蒼だった。
「いや、急すぎだって」
蒼「どーせ暇だろ?ほら行くぞ」
「…はぁ」
蒼「ほら!」
というと、体が勝手に前に出た。
驚くのと同時に手元を見ると、私は蒼に手を引かれたまま走り出していた。
「ちょ、え!?」
蒼「青春感じんなよ?」
「は?ちょ、ねぇ!!」
私の方をチラリと向いては、白い八重歯を見せながらふっと笑った。
繋がれている右手。
蒼の手は暖かかった。
走り出す私たちの足元には咲き始めた桜の花びらが遠慮がちに落ちていた。
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作者名:とちもち | 作成日時:2022年11月20日 19時