第八話 ページ8
「ハアッ…ハアッ…」
久しぶりに走ったせいで汗だくになりながら、ようやく家の玄関に辿り着いて下駄を脱ぐ。
心身共に疲れすぎていつものように揃えることも、ただいまと言うことも出来ない。
とにかく今はただ眠りたくて、自分の寝室に転がり込んだ。
元々敷いてある布団に潜り込んだところで、私が帰ってきたのに気付いたらしい梓が走ってくる音が聞こえた。
「どうしたんだよ?様子が変だけど…
下駄も揃えてないし、ただいまも言わない。
もしかして…男と何かあったの?」
「……何もない。何もないから梓は心配しないで」
すごく心配そうな顔をしてくれるのは嬉しいけど、梓に不安な思いをさせたくないの。
だから私は平気な振りをした。
本当に出来てるかどうかは分からないけど。
「何もなかったらそんな顔、椿はしない。
…どれだけ一緒にいると思ってるのさ」
「…ごめんね、梓。だけど…言えない。」
どうやら梓にはお見通しだったらしい。
でもこんな気持ち、絶対に彼には言えない。
私は梓に謝ると、もう一度深く布団に頭まで潜って目を閉じた。
「…椿が言いたくないなら聞かないよ。
面倒臭い男にはなりたくはないからね」
すると、梓は小さく呟いて部屋から出て行く。
その少し寂しそうな声にたまらなく切なくなるけれど、そんな思いを振り払うようにぎゅっと目を瞑って首を横に振った。
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サボテンの花(プロフ) - 抹茶カステラさん» うわあ〜!ありがとうございます(ノ)゚∀゚(ヾ)この後お話は大きく動きますが、最後まで見守って頂ければ嬉しいです! (2015年2月25日 0時) (レス) id: c8a8a442e9 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶カステラ(プロフ) - 今後の展開が気になります!あの2人のうち1人選べと言われたら、迷います(笑)これからも更新頑張って下さい! (2015年2月25日 0時) (レス) id: db1d54f625 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サボテンの花 | 作成日時:2015年2月19日 3時