第六話 ページ6
綺麗な三日月の夜。
私はまた客を取るために、真っ赤な着物を着て夕暮れの街をふらふらと歩く。
すると、珍しく誠実そうな若々しい青年に声をかけられた。
「お一人…ですか?あの、良かったら一緒にお食事でもどうかと思って…」
初心そうだけど、明らかにお金持ち。
どこかの大店の若旦那か何かかしら。
私は彼をじっくりと観察し、しばらく考えてから返事をする。
「ごめんなさい。私はお食事には興味がないの。興味があるのは一晩だけの愛とお金だけ」
「えっ…?」
目を見開いたまま固まる彼は、やっぱり初々しい。
こんな人が声をかけて来るなんて珍しいわね…
「…分かりました。
それならお願いがあります」
「ん?何かしら」
彼は少しの間の後、覚悟を決めたようにこう言った。
「一晩一緒に過ごしてみて、俺の事を気に入ってくださったら…俺の妻になってもらえませんか?」
「…は?」
…妻?なに言ってるのこの人。
まだ出会って一刻も経っていないのに。
固まっていると、彼は続けて言う。
「あのっ俺本気なんです!一目惚れしました!
お願いします!」
「え、と…あの…」
「好きです!」
なんて真っ直ぐなのだろう。
真剣な嘘のない瞳で私だけを見ている。
こんな人初めてだから、焦ってしまう。
どうしたものかと思案した結果、私は一つの答えを出した。
「残念だけど私はお金にしか興味はないの。
愛だの恋だの、そんなのは必要ない。
…でも、もしあなたがもしも一晩で夢中にさせてくれるならその時は…」
そんな事あるはずがないし、多少気に入ったとしても金だけ抜いて夜のうちに逃げよう。
そう思って言ったのに、彼は花が咲くのではないかと思う程の笑顔で答えた。
「いいんですね?!…俺、本当に嬉しいです!
絶対にあなたを夢中にさせてみせますから!」
「えっ…ちょっ…!」
そして私は彼に言われるがまま、近くの出会い茶屋に連れ込まれてしまったのだった。
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サボテンの花(プロフ) - 抹茶カステラさん» うわあ〜!ありがとうございます(ノ)゚∀゚(ヾ)この後お話は大きく動きますが、最後まで見守って頂ければ嬉しいです! (2015年2月25日 0時) (レス) id: c8a8a442e9 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶カステラ(プロフ) - 今後の展開が気になります!あの2人のうち1人選べと言われたら、迷います(笑)これからも更新頑張って下さい! (2015年2月25日 0時) (レス) id: db1d54f625 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サボテンの花 | 作成日時:2015年2月19日 3時