『背中合わせの二人 -Satoshi.O-』 Part4 (ページ9)

今日:6 hit、昨日:1 hit、合計:169,932 hit

-39- Nside ページ9

俺らにもはっきりと聞こえたその声は

大野さんが想ってる人の声によく似てる。

まさかね…

って心の中で笑いながら

その声のする方を見た。

.

俺らから程遠くないテーブルに

高校の時の可愛さも残しながら…

大人の綺麗さを醸し出してるAちゃんが座ってる。

その向かいには大野さんとも…

櫻井とも違う雰囲気の男が座ってる。

俺と同じ方を見つめてる大野さんにも確実に見えてるよな？

智「知ってたの？」

雅「え………」

智「悪ぃけど俺帰るわ」

和「は？」

真っ黒い長財布から1万円をｻｯと抜いて

俺らの前に少し強く置いた。

そのまま…俺らが止める術もなく

大野さんの背中は店から出てった。

.

雅「ごめん……でも、俺本当に知らなくて」

和「だろうな」

知ってて…ここに連れてきたんなら

大野さんにぶっ殺されてるよ。

あんなさ……大人っぽくて

他の男に笑いかけてる姿見んのなんて

相当ｷﾂいだろうな。

もし…自分が見たことない姿だったら尚更でしょ？

.

雅「あの人…誰なんだろう？」

「さぁ？」

雅「まさか彼氏とか？」

「Aちゃんに限って、そりゃねぇだろ(笑)」

雅「だよね(笑)」

なんて…口では笑ったけど

んな保証はどこにもなくて

むしろ……今いる顔の濃いイケメンと良い雰囲気だっていうのが正解だ。

つか…大野さんのケアもしねーとだし

色々、事実関係も調べねーとだな。

和「そういや…Aちゃんと櫻井って繋がってんだっけ？」

雅「うん。そうだよ」

和「なんで？」

雅「なんだっけ？……あ、会社が一緒だった気がする」

和「ちょっと訊いてみてよ」

雅「何を？」

和「会社に彼氏いんのか」

俺の願いに分かりやすく驚いた相葉さんを

“声がでけぇよ”って怒りつつ

その場で爽やか先輩に連絡させる。

ほんで…その返信は1分もしないうちに来た。

雅「“なんで？”だって」

和「相変わらずお堅いね(笑)」

雅「なんて返すの？」

和「色々あって…じゃない？」

雅「おっけ」

そして…本当に色々あって

俺たちと爽やか先輩が会う事が決まった。

.

たぶん…Aちゃんは俺たちの存在にも

ずっと前に立ち去った大野さんの存在にも

あの時は気づいてなかった。