『背中合わせの二人 -Satoshi.O-』 Part4 (ページ6)

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潤さんのお勧めの映画館は凄く大きくて

週末だからお客さんもいっぱいいて

自然に私の左手は潤さんの右手に捕まった。

潤「超混んでるね(笑)」

「…ですね(笑)」

潤「お…チケットの列ここだ」

目の前にはそれなりに長い列ができてたけど

“間に合いそうだな”って潤さんが時計見ながら言ったから

たぶん大丈夫なんだろうけど…

潤「ちょっとさ…俺のチケット持ってて」

「え？どこ行くんですか？」

潤「すぐ戻る」

「わ、分かりました」

カッコよく列を抜けた背中は

すぐに人ごみで見えなくなって

私の手の中には…もうすぐ満席になりそうな映画のチケットが2枚。

.

もうすぐ…私の番なのに

潤さんはまだ戻ってきてくれなくて

手の中に残されたチケットに小さく溜息を吐いた。

潤さんが見えないから…ちょっとだけの不安。

「わ……」

私の後ろから長い腕が伸びて来て

その手にはポップコーンと飲み物が握られてた。

そのまま…少しだけ息の切れた声が

私の上から降ってくる。

潤「…ごめん。めっちゃ混んでた」

「全然…こんなの買ってくれてるなんて」

潤「なんか…映画館デートっぽいことしたくてさ(笑)」

ちょっとだけ照れくさそうに笑った潤さんが

私の横に立った時に

ちょうど“次のお客様”って呼ばれちゃった。

これってデートなんですか？

なんて聞けないまま…

チケットブースでお姉さんと話してる。

◇『16時の回ですね？』

潤「空いてますか？」

◇『こことここで分かれたお席か…カップルシートが1つまだ取れますね』

潤「じゃあ…こっちで」

◇『はい。ではチケットお出ししますね』

潤さんが座席表のどこを指したのか分からなくて

斜め後ろからｼﾞｰｯと見守るだけにした。

◇『J列のカップルシートAになりますね』

潤「はい」

◇『すでに開場はしております…右手奥の10番シアターになります』

チケットを受け取った潤さんが

“離れないでついて来て”って言うから

その後ろをずーっと歩いて10番シアターを目指した。

あ…ポップコーンと飲み物ずっと持たせちゃった。

後輩として持つべきだったのに

チケットも食べ物も全部潤さんに持ってもらっちゃった。

潤「ここだ」

この席じゃ…本当にカップルみたい。