-62- Aside ページ32
俺とニノが…1回家に帰って
一緒に昼ご飯買ってから、金髪くんの家に戻ったら
エントランスでAちゃんを見かけた。
雅「Aちゃん!!」
和「聞こえてないみたいよ」
雅「あ…電話してる」
電話してるAちゃんは…
俺らなんか見えないみたいで
たまたま通ったタクシーに乗り込んじゃった。
泣いてるように見えたけど…
ニノは何にも気にしてない様子で
“ほら、行くよ”って俺を呼ぶから
俺も開いて待ってるエレベーターに乗った。
.
数時間ぶりに来る部屋は…
煙草の匂いが充満してて、スウェットに身を包んだ金髪くんが
ソファに死んだように寝っ転がってる。
和「病人が煙草吸っちゃダメなんじゃねーの？」
雅「うわ…こんなに吸ったの!?」
智「うっせーよ」
和「熱は？」
智「ねぇんじゃね？」
雅「測ったの？」
智「測んなくても分かる」
びっくりするくらい刺々しい金髪くん。
目が死んでるみたいに宙を見て
幻覚でも見てるんじゃねぇかって思うくらい。
.
和「Aちゃんと何があったわけ？」
智「別に…何も」
和「抱こうとして拒否られたとか？」
智「んふふ…逆だっつーの(笑)」
雅「え？じゃあ…」
智「最後まではしてないけど」
そうやって言うだけ言って…
10本以上がすり潰された灰皿を持って
一気にゴミ箱に捨てた。
抱けたのに…抱かなかったって何？
“最後まで”してないって事は
途中まではしたの？
言ってる意味が全然分かんないんだけど。
.
和「ﾁｷった？ここまで来て？」
智「かもな(笑)」
雅「それで…喧嘩したの？」
智「いや……分かんね」
金髪くんが、こんなに悩んでいるとこを見るのは初めてで
いつもは全てを隠しちゃうのに…
今日だけは全ての想いが表情に出てる。
金髪くんのAちゃんに対する想いが…
.
和「昼飯食う？」
智「…ん」
俺たちが買ってきた弁当が温められてる間…
誰も声を出さなかった。
ううん……出せなかったのかも。
そのあと…誰もAちゃんの話をしなかった。
でも、金髪くんの心はここにあらずで
どんどん天気の悪くなっていく空をずっと眺めてるだけだった。
.
あの日の金髪くんの横顔を今でも覚えてる。
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作者名：storm@japan
| 作成日時：2015年3月20日 12時
