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始発が動き始めたころに…
相葉先輩とニノは“一旦帰るわ”って帰っていっちゃって
残された私は…
こんな形で初めて入った智の家の中を歩き回ってた。
私の部屋なんかよりも広いのに
物が全然なくて…
冷蔵庫の中も水とバナナくらいしか入ってない。
唯一生活感があったのは…
昨日吸ってたんだろう煙草がある灰皿。
こんなのいつ体調崩したっておかしくないのに
全然気づいてあげられなかった…。
.
私の足は…自然とベットルームに向かってて
まだ少し苦しそうに息をしてる智の手をゆっくり握った。
本当に高校の時から変わらない綺麗な手。
この手に頭を撫でられると…
いっつも幸せになったっけ。
授業では…枕になってた手が
スケッチになると機敏に動いて
“見て…真っ黒(笑)”とか笑いながら、その手見せられてたな。
智「……んっ」
「智？」
智「何してんの？」
「智の看病に決まってんじゃん」
智「プレゼンあんでしょ？」
「とっくに終わったよ」
別に大きな病気したわけでもないのに
智の目が私をしっかり見て
ちゃんと話してくれることに
涙が出たのは……どうしてだろうね。
智「なぁに泣いてんの(笑)」
「だって…」
智「っしょ……おいで」
おでこに冷えﾋﾟﾀを貼った智が…
ベットの上に座って私の腕を引いた。
体重をかけちゃいけないのに
柔らかいベットの上じゃ…
うまくバランスが取れなくて
智にどんどん寄り掛かるみたいになっちゃう。
でも…まだまだ苦しそうな智の腕は
私をしっかり支えてくれて
それから強く抱きしめてくれた。
…苦しいくらいに。
.
智「なんで泣くの？(笑)」
「智が病気なんて…初めてで……」
智「怖くなっちった？」
「……たぶん」
智「大丈夫。ここにいるから、ね？」
あの手が優しく髪の毛を撫でていって
今日は…涙を止めるんじゃなくて
ますます出させる。
“もー”って少しだけ笑った智が
私の髪の毛の中に手を差し込んで
私の頭をｸﾞｯと引き寄せたの。
それから…耳元で聞こえる声。
智「ちゃーんと好きだから」
ちょっとふざけた声だけど
私にとって甘すぎるその声に
もう一度“私も”って返すことは…もうできないかもしれない。
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作者名：storm@japan
| 作成日時：2015年3月20日 12時
