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あの日の夜…
私は見たものに耐えられなくて
その場から家に帰った。
だって…智はキスされたのに
別にいつも通りの表情で
ちょっと笑ってから“気ぃつけて帰りなよ”って言ってたんだもん。
.
潤「またﾎﾞｰｯとしてる(笑)」
「え…あ、すいません」
潤「いいよ。集中できない日もあるからさ」
「でも…もう気持ち切り替えます」
潤「頑張れ」
今週中ずーっとそうやって注意されてばっかり。
もういい加減…智の事を仕事中だけでも忘れないと
潤さんにばっかり迷惑かけてる。
.
あの後…智は別に連絡をしてきたりすることもなくて
また私たちは連絡を取らなくなっちゃった。
心のどこかで…怒られることを望んでたのに
何もされないのが一番つらい。
約束をすっぽかしたんだよ？
だから…どうして来なかったの？
なんかあったの？って本当は訊いてほしかった。
なんて…独りよがりすぎるのは分かってる。
.
だから…そんな気持ちなんて捨てて
ひたすら、目の前のパソコンに打ち込んで
次のプレゼン準備に全身全霊で臨んだ。
「はぁ……終わったぁ」
潤「お疲れ様(笑)」
「あ、聞こえました？//」
潤「結構大きかったからね(笑)」
「…聞かないでくださいよっ//」
自分でも分かるくらいに
おじさんみたいな声を出しちゃったから
隣のデスクから声がしたときは驚いた。
喫煙所に行ったと思ってたのに…
いつの間にか帰ってきてるんだから。
潤「今日は残業なしじゃん(笑)」
「いつも…すみません//」
潤「いいって(笑)」
「本当に終わってﾎｯとしてます」
マシーンみたいに仕事を処理したら
ひさしぶりに残業なしで終わって
潤さんに迷惑をかけないで済んだ。
だから…お礼として何かしたいのはこっちなのに
“じゃあ…ご褒美ね”って
1枚の紙が私のデスクにﾊﾗﾘと落ちた。
「映画……？」
潤「興味ある？この映画」
「あ…ちょうど見てみたいなって思ってましたけど」
潤「じゃあ…俺と一緒だけど観に行こうか」
そうやって優しく笑った潤さんの手にも同じチケットが握られてて
“いいんですか？”って思わず訊いたら
また優しく笑ってくれる。
潤「今週の土曜でいい？」
「はい!!」
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作者名：storm@japan
| 作成日時：2015年3月20日 12時
