『背中合わせの二人 -Satoshi.O-』 Part4 (ページ20)

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私の携帯が鳴ったのは…

もう再来週に迫ってるプレゼンの準備を

残業でやってるときだった。

“話したい。今週末空いてる？”って

簡単な文章だけ書かれたメール。

差出人は…智。

会いたい気持ちもあるし…

話したい気持ちもあるのに…

こういう時に限って忙しくて

私の返信は“ごめん。仕事なの”って有りえないくらい冷たいものになった。

潤「先方？」

「あ……いや、すいません」

潤「別に全然いいんだけどさ(笑)」

ちゃんと…どんなに残業しても一緒にいてくれる潤さんの声に

手に持っていたスマホを机に伏せて置いた。

今頃…智にメールが届いてるかな？

なんて思いながら携帯を離した。

潤「そういえばさ…前に約束した場所あったじゃん？」

「あ……あ、はい」

潤「プレゼン終わった日に行こうか」

「いいですね!!」

潤「でしょ？決まりね(笑)」

「はい(笑)」

.

それからプレゼンの日まで

毎日のように残業をして…

何日かに1回…智からの“今日は？”って連絡があった。

でも…もう学生じゃない。

好きな人に会いたい気持ちは大きいけど

そんな事より仕事を選ばなきゃいけない時がある。

それが…今なの。

でも…罪悪感は募っていく一方で

プレゼン準備の終わりが見え始めたころの夜。

私から…ずっと前の履歴に残ってる智の番号に発信した。

.

智『もしもし…』

「智…私、だけど」

智『…んふふ、待ってた』

「ごめんね。連絡できなくて」

智『仕事忙しかったんでしょ？』

「そうなの。ちょうど仕事の目処がたってね」

智『会えそ？』

「うん。金曜日にその仕事が終わるから」

“じゃあ…”ってスマホの向こうで

智が悩んでる声が聞こえる。

きっと…カウンターの中にある小さなカレンダーを見ながら

いつにしようか考えてるんだろうな。

智『その日は？』

「あ…その日は約束があって」

智『んーじゃあ、次の日。土曜』

「その日なら大丈夫」

智『…色々話してぇから』

突然…真剣な声になった智に驚いてると

ラウンジに来た先輩が戻ってきてって合図をしたから

“ごめん”って急いで切って仕事に戻った。

私は…この時の自分を、今でも後悔することがある。

どうして気づけなかったの？って。