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タクシーに乗り込んで…
翔先輩が行先を告げてくれたけど
動き出してから…智のお店の方に行先を変えてもらった。
あともう少しで閉店時間。
きっと私が着くときにﾋﾟｯﾀﾘ閉店時間だろうな。
そう思ってると…
タクシーは段々とお店に近づいていて
大通りから外れて住宅街の方に入ろうとしてる。
「あ……ここら辺で大丈夫です」
『はいじゃあ…1600円ね』
「はーい」
家に帰る方が安かったタクシー代。
だけど…そんなのも全然気にならないくらい
心臓がﾄﾞｷﾄﾞｷと脈打ってて…
お財布からうまくお金も出せないくらいだった。
.
ヒールの音をｺﾂｺﾂと響かせながら…
徐々に智のお店に近づいていく。
まだ…店内にオレンジ色のライトが灯ってて
ちょっと遠巻きに店内を覗いてみるとお客さんはいないから
閉店作業中かな？
そう思って足を近づけると…
お店のドアに人が見えた。
スーツを着てて…ロングヘアーで…
たぶん私と同い年か、ちょっと年上くらい。
◇『…た。と…も、た……かった』
智「ありがとうございます」
◇『今度も……だわ』
智「なぁに言ってんすか(笑)」
◇『……よ？』
智「だから……ないって(笑)」
その人と智が楽しそうに話してて
私の足は止まっちゃって
近づくことも、聞こえないように遠ざかることもできなかった。
私の視界の中で…二人は本当にくっつきながら話してて
お店の明かりに照らされた智の顔は楽しそう。
それは女の人も一緒。
.
女の人は慣れた手つきで…
ライオンの鬣みたいに立てた金髪を撫でてて
智が“やめろよー(笑)”って笑いながら
女の人の手を握る。
その様子に…心が勝手に傷ついて
ﾄﾞｷﾄﾞｷはｽﾞｷｽﾞｷに変わっていったのに
耳だけは研ぎ澄まされて…二人の会話がしっかり聞こえちゃう。
智「もーおしまいね(笑)」
◇『んーこのﾌﾜﾌﾜ好きなのにぃ』
智「だーめ……もう帰んなさい」
◇『また明日来てもいい？』
智「ダメって言っても来んでしょ？(笑)」
◇『…ぅん//』
“んじゃね”って言う智から、その人が離れようとしたら
躓いたみたいで…智が抱きしめるように支えた。
.
“ありがと”の代わりに女の人は…
智にキスをした。
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作者名：storm@japan
| 作成日時：2015年3月20日 12時
