cafe and bar MADNESS 5

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「どうしようかな……
行ったことないとこがいいよね」

「うん。でも家族旅行は
西日本に行くことが多かったから、
近くは意外と行ったことないかも」

「あ、ほんと？
じゃあ俺も行ったことないとこにしよ。
熱海はよく行ったし、
箱根も行ったことあるしなぁ」



その言葉に、
隆二さんは誰と熱海や箱根に行ったのだろうと
ふと思った。

もしかしたら子供の頃
家族で行ったのかもしれないけど、
隆二さんは大人だから
彼女と温泉旅行に行ったこともあるだろう。

以前、『美女と野獣』を
飛行機の中で見たと言っていた時は
臣さんと一緒だったと聞いた。

だけど、大人の隆二さんが
いつも臣さんと旅行に行っていたとは考えにくい。

前の彼女と
仲よく温泉に浸かったりしたのかなぁと思ったら
嫌な気持ちになって、
黙り込むとそれに気づいた隆二さんが
顔を覗き込んできた。



「なに、どしたの」

「……」

「なんか拗ねてる？その顔すげー可愛いんだけど」



口を尖らせているとそんなことを言われて、
恥ずかしくなる。

顔を覆って俯くと、隆二さんが笑った気配がした。



「なーに。言いなさい。
つかその可愛い顔見せてよ」

「やだ……」

「あ、反抗するんだ。悪い子はお仕置きだな」



そう言った隆二さんが私の両脇を掴み、
思いっきりわしゃわしゃしてきた。

あまりのくすぐったさに耐えきれなくて
逃げようとするけど、
隆二さんの力には敵わない。



「きゃははは、やだ、やだっ！」

「じゃあちゃんと言う？」

「言う、言うからっ！」



必死にそう答えると、
隆二さんはやっとくすぐるのをやめてくれた。

息も絶え絶えになりながら
うずくまると、
私の体を引っ張り上げた隆二さんが
抱っこしてくれる。

苦しくて涙目になった私の顔を覗き込んで、
優しくほっぺたを撫でてくれた。

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