cafe and bar MADNESS 2

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「……すみません」

「あ、また。
すみませんって言った」

「だって……」

「だってじゃない。
すみませんじゃなくて、
ちゃんと思ってることを言って」

「……誰と、観たのかなって」

「え？」

「だって、美女と野獣とか、
大人の男の人が選ぶ映画じゃないじゃないですか。
だから、女の人と、観たのかなって、」



泣きながら思い切ってそう言うと、
隆二さんは吹き出した。

体が揺れるほど大笑いされて、
ますます悲しくなる。



「もー……可愛すぎんだけど。
ヤキモチ妬いたんだ？
あーどうしよう、マジ可愛い」

「……」

「臣だよ。
一緒に旅行行ったの、臣と。
まだナオちゃんと付き合う前だから、
臣も彼女いなくて。
美女と野獣は、
普段絶対観ないやつにしようぜーって、
ノリで選んで。
ふたりで大号泣したっていう」



そう言って、隆二さんはまた可笑しそうに笑った。



「可愛すぎて困るんだけど……
映画観せてあげられなくなる」



私の顔をすくい上げるように持ち上げた
隆二さんが、手で涙を拭ってくれる。

涙ににじむ目で見つめると、
隆二さんも私を見つめ返した。



なんて綺麗な形の目なんだろう、と思う。

今日の隆二さんは眼鏡をかけていなくて、
至近距離でじっと見つめると
コンタクトがうっすら見える。

コンタクト越しでも黒い瞳が綺麗で
見とれていたのに、
隆二さんが目を伏せたせいで
見えなくなってしまった。



何度も何度もキスをされて、
昨日教えてもらったようにがんばって息をする。

どきどきして胸が苦しくて、
でも甘い気持ちにもなった。

縋るように隆二さんのニットを掴むと、
手を外されて指が絡んでくる。



「可愛いことすんなって……」



少し掠れたような声でそう囁いた隆二さんが
私の首の後ろに手を回して、
おでこをこつんとくっつける。

隆二さんが苦しげにため息を吐いて、
それを訝しく思っていたら
「もう心折れそう」と囁かれた。



「……え？」

「お願いだからあんま可愛いこと言わないで。
可愛いことすんのもナシ」

「え？え？」



私には全くそんなつもりはなくて、
ただみっともなく泣いてしまっただけなのに。

隆二さんの言葉の意味が分からなくて
困惑していたら、ほっぺたをむにっと掴まれた。

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