cafe and bar MADNESS 2

64 ページ15

可愛かったなと思って
笑みをこぼすと、
それに気づいた隆二さんが
「なに笑ってんの」と
カウンターの中から手を伸ばして
頭を軽く小突いてくる。

ナオさんたちの家でされたことはあるけど、
今までだったらマドネスの中で
隆二さんがそんなことをするなんて
考えられなかった仕草に、胸がきゅんとした。

本当に私は、
昨日隆二さんの彼女になってしまったのだ。

そう思うとうれしくて、ますます顔が綻ぶ。



「昨日Aちゃんが帰った後
クリスマスケーキみんなで
食べたんだよ。
本当は帰る前に
出してあげたかったんだけど」

「そうなんですか？」

「うん。だからAちゃんの分取っといた」



そう言った隆二さんが、
業務用冷蔵庫からケーキを出して
私の前に置いてくれた。

四角く切り取られたショートケーキの上に、
いちごとクリームとサンタさんが乗っている。



「可愛い。おいしそう」

「自分で言うのもなんだけどうまいよ。
今カフェラテ入れるね」



これも隆二さんの手作りなのか、
すごいなぁと思っていたら
いつものように淀みない手つきで
カフェラテを入れ、
ラテアートを施した隆二さんが
目の前にカップを置いてくれた。

昨日と同じように
リーフの上がハートになっている
特別なラテアート。

うれしくて仕方なくて、
心を込めてお礼を言うと
隆二さんもニッコリ笑って
頭をポンポンしてくれる。



「できたら一旦店閉めるまでいてほしいな」

「いいんですか？」

「うん」



マドネスは、夕方まで営業した後
夜の部の準備のために一度閉店する。

それまでいていいと言ってもらえて、ほっとした。

他のお客さんがいる時に
クリスマスプレゼントは渡しにくかったし、
準備の前に少しだけ時間をもらって
渡して帰ろう。

そう考えながら
クリスマスケーキをありがたくいただいた。

隆二さん手作りのケーキは
スポンジが甘めだけど
クリームが甘さ控えめでくどくなくて、
やっぱりおいしい。

今日も特別なラテアートの写真を撮って、
おいしいカフェラテも堪能した。

65→←63

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す