実質無職の友人 ページ15
今迄聞かれることのなかった質問。
それは陽の事を調べていくうちに、無意識に知ろうと思わなくなっていった。
『無職なのですよぉ〜』
「嘘ですよね?」
『本当なのですよぉ〜』
へらへらと笑いながら話す陽の真意は掴めない。
だがコナンと安室は今迄の経験から、この人物が簡単に教えてこないということが分かっていた。
そこに驚きのタネを蒔いたのは敦であった。
「あれ、陽さん無職なんですか?
てっきり、政府の人かと」
『政府に協力はしてますけどぉ、それは安吾君の所との契約だけなのですよぉ〜』
「実質無職」と言い続ける陽に、コナンと安室は自分の考えが崩れ始める。
もしかしたら本当に政府の人間なのかもしれない、と。
だが、だとしたら陽のあの血に塗れた経歴を政府が知らないはずが無い。
即ち、政府は陽の事を黙認しているということ。
そうなれば、二人の胸にはふつふつと怒りがこみ上げて来た。
『____でもぉ、私に政府の仕事は生まれた時から向いていなかったのですよぉ〜。
私はせいぜい、汚れながら裏で政府の為に動くのが一番なのですよぉ〜』
自嘲気味に呟いた陽。
その場にいた全員が、陽の表情を見て息を飲む。
中性的で誰もが振り向くほどの美貌を持つ陽は、常にあげていた口角を薄く横に伸ばすだけにして、灰色の瞳は後悔の念で満たされていた。
此処にいる誰もわからない。
陽の手が友に言われた言葉を実行する事を拒否している事を。
魂は望んでいるのに、体は拒むのだ。
かつての友人が果たしたかった夢を、血に汚れた自分で成し遂げる申し訳なさ。
コナンと安室は、一瞬で先刻の怒りの感情を忘れてしまった。
『収入は若い時に貯めといたやつで生活できているのですよぉ〜」
自分のせいで訪れた沈黙を破る様にして、言葉を放つ陽。
その表情はいつもの顔に戻っており、先程の感情など微塵も感じさせなかった。
鏡花だけは、壊れそうな感情が陽の奥底に眠っているのを感じていた。
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作者名:鸞宮子 | 作成日時:2020年1月12日 16時