【鬼滅の刃】一妻多夫制の柱さん

二年前 壱 ページ7

Aside


………………………嗚呼、遅かったか。


雪が厚く積もる山の中に建っている一軒の家。


義勇と走りながら家に近づいて行く度、血の匂いがどんどん強くなっていく。


家の玄関には小さな男の子が倒れ、血を流して死んでしまっていた。


｢…っ………、ごめんね。痛かったね、辛かったね………｣


私はその子を胸に抱き、血が付くことも気にせず泣きながら強く抱きしめる。


これ以上弟のように、若くして命を落とす人を見たくないというのに…。


涙脆いのは小さい頃からだ。だから柱になった今でも涙腺が緩く、鬼が去った後の現場はとても辛い。


なんとか涙を袖で拭って男の子を家の中にそっと寝かせる。


中も血の匂いが酷く、まさに地獄のようだ。


その光景に耐えられず俯くと中を確認していた義勇が近寄ってきた。


冨岡｢中は女が二人、男が二人死んでいる。そのうちの三人は子供だ｣


｢そう………ありがとう｣


そう答えてから私は再度悲惨な部屋の中を見回す。


一人の女性は母親なのだろう。小さな女の子を守るように死んでいる。


……だから鬼は嫌いだ。人間の幸せな時間を奪い、将来を喰っていく。本当に残酷だ。


嗚呼……そう考えただけで涙が溢れてくる。こんな情けない柱は他に居ないよな…………。


溢れてきた涙を拭おうとすると私の袖より先に、義勇の指が私の涙を少し雑に拭った。


冨岡｢………今は泣いてる場合じゃない。先を急ごう｣


「っ……う"ん………!!……も"う"…そういうとこ好き……っ」


涙を拭ってくれた指の手をそのまま自分の頬に寄せて、擦り寄りながら言う。


義勇は若干眉を顰めながらも振り払わずにいてくれた。


義勇の優しさにいつも私は甘えてしまう。悪い癖だ。


気を取り直して私と義勇は残っていた足跡を追った。


足跡は村に続く道を歩んで行っているようで、足跡の形を見るに酷く焦っているようだ。
少し足先のあたりが擦れてしまっていて、走っていたのが分かる。


玄関で死んでいた男の子の近くには人が倒れていたような雪の凹みがあった。


恐らくその人物はあの男の子を、家族を庇い守ろうとしたと考えられる。


その人は運良く息がまだあったのだろう。でも鬼の血を傷口に浴びてしまっていたら………と考えると頭が痛くなってくる。


冨岡｢っ…!｣


｢!!義勇っ！?｣


私が考え事をしていたせいか、義勇は私より先に何か気付いたらしく
その何かの方へ駆けて行った。

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