炎柱の遺言の話 ページ11
襖を開けたのは、家事をしていたはずのAさんだった。
Aさんは私の次に炭治郎さんを見つけると、
こんにちはと挨拶をしてから私に声をかけた。
「千寿郎のお客さん?」
千寿郎「はい…
兄上の言葉を預かったとわざわざ訪ねて来て下さったんです」
そう言えば驚いて炭治郎さんを再度見ると、炭治郎さんはそっと頭を下げた。
Aさんは炭治郎さんの頭が上がると襖を閉めて私の隣に座る。
「わざわざありがとうございます。
私は煉獄Aと言います。煉獄杏寿郎の妻です」
言い終わってから手を畳に付けてお辞儀をする姿はとても綺麗で、髪が動きによってなびく度にいい香りがした。
炭治郎さんはAさんを見つめた後はっとし、また頭を下げて自己紹介をする。
そして少しの沈黙の後、私は兄の最期について聞く為に
さっき言いかけた言葉を言った。
───
千寿郎「そうですか……兄は最期まで立派に……
ありがとうございます…」
涙が止まらなかった。
やはり兄上は凄い。
多くの人質がいながら死者を出さず、上弦に致命傷負わせるなんて…。
隣のAさんも顔を手で覆い隠し、嗚咽を漏らしながら泣いていた。
竈門「いえそんな…力及ばず申し訳ありません」
炭治郎さんが気に病むことではないし、
謝る必要もない。
兄もきっと気にするなと言ったはずだ。
千寿郎「気になさらないでください。
兄もきっとそう言いましたよね?」
そう問いかければ、図星だったようで表情に"言っていた"と書いてあった。
それからはヒノカミ神楽の事について話し、
炭治郎さんは私たちに兄のような強い柱になると宣言してくれた。
私にはその言葉が何より嬉しかった。
「………」
Aさんは終始無言で、静かに涙を流すばかり。
その様子のAさんを、炭治郎さんは心配そうに何度も見ていた。
宣言をAさんがどう思い、受け取ったのかは分からない。
でも、聞いた瞬間の顔は少しだけ悲しみを消したように見えた。
安心したような、悲しみが和らいだような感じがしたのだ。
竈門「千寿郎さんには
"自分の心のまま、正しいと思う道を進め"
と……」
千寿郎「兄上…っ…」
竈門「お父上には
"体を大切にして欲しい"
とだけ伝えてくれと言われました。
そして………Aさん」
「……ん」
Aさんはやっと止まった涙がまた流れそうになるのを必死に堪え、唇を血が出るほど噛み締めた。
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春月卯月(プロフ) - フィオナさん» ありがとうございますー!一応最後の展開までは考えているので頑張ります!応援ありがとうございます! (2019年11月20日 21時) (レス) id: e961db7c14 (このIDを非表示/違反報告)
春月卯月(プロフ) - ユリさん» 気になって下さって嬉しいですー!なるはやで頑張ります!ありがとうございます! (2019年11月20日 20時) (レス) id: e961db7c14 (このIDを非表示/違反報告)
春月卯月(プロフ) - 影姫一閃さん» タイトル悩んだんですよ本当にー!いい話なんて滅相もない!勿体ないお言葉です!ありがとうございます!頑張りますー! (2019年11月20日 20時) (レス) id: e961db7c14 (このIDを非表示/違反報告)
春月卯月(プロフ) - 椿さん» 応援ありがとうございますー!楽しみにして下さって光栄の極み!頑張りますね! (2019年11月20日 20時) (レス) id: e961db7c14 (このIDを非表示/違反報告)
フィオナ - この後の展開が気になります。更新頑張ってください (2019年11月20日 20時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春月卯月 | 作成日時:2019年11月19日 22時