回夏の幽霊 (ページ27)

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高い場所から眺める富裕街はちっぽけなものだった。奥を見れば廃棄ガスの流れる貧困街を見ればやはり穢らしい田舎の鼠。そしてこの富裕街は綺麗な身なりをして貧困街から金を巻き上げる都会の鼠。

いくら身なりが綺麗でも、貧困街の鼠を虐め苦しむ姿や金を巻き上げるさまは悪魔にさえ見えた。私の母親は産まれてすぐに死んでしまったから分からないけれど、きっと綺麗な人だったんだなと思っている。

審美眼とは言えないこの目を信じて今日まで生きていたのだから。

「眺めを気に入ってくれたか。

「…ふく、

「あぁ、お前の為に良いものを作らせたんだ。どうだ、水色の綺麗なルームワンピースだ。

「るーむ、わんぴーす…？

「簡単に言えば寝間着だ。

「今日は部屋に出ないからイエでゆっくりしていると良い」と男は言った。買われた身なのに何かをされるかと身構えていれば特に何もせずに「欲しい物があれば買ってやる」といいそのまま部屋を出ていった。

自由なのに、自由ではない。鼠がいきなりこんな綺麗な布を用意されれば何をすればいいか分からなくなってしまう。

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