【短編集】【inzm】 (ページ5)

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家に帰って、ベッドに倒れ込んで今日のことを思い出す。誰なんだろう、あの人。名前はなんていうのかな、同級生なのかな、しっかりしてたから年上？…かっこよかったな。私がわかるのはサッカー部ということだけで、名前も学年もわからない。聞けばよかったかな、いやいや、でも向こうは練習中だったし……

『と、いうわけで！和泉くん、サッカー部について教えてほしいの！』
「…は、あ？？」
『お願い！ほらほら、だって昨日、きみの分まで日直の仕事やったげたでしょ？そのお礼だと思って、ね！』

翌日。考えてもどうにもならん！でも気になる！そうとなれば行動！という思考に至った私は、クラスメイトのサッカー部員、かつそこそこ話す仲の和泉くんに手を合わせて懇願中。
目の前で机に肘をついてこちらを見上げる和泉くんは、急になんだこいつと言わんばかりに眉を顰めた。が、私が日直の件を引き合いに出すと、そろりと一瞬目を逸らした後、「何が聞きたいんだよ？」とため息混じりに言った。

『さすが和泉くん！あのね、サッカー部の人で探してる人がいるの。きりっとした眉と、下まつげが綺麗で、髪はふわふわしてて…あっ髪の毛ね、両サイドにちょっと癖があったかな、つんって外に跳ねてるの、そういう特徴の人、サッカー部にいないかな？』

矢継ぎ早に覚えている昨日の彼の特徴を告げる。和泉くんはちょっと引き気味に「あ、ああ…一人、思い当たるのが」『ほんと！？』「本当！本当だからそう詰めるな近い！」
ほんのり頬を染めた和泉くんに指摘されて初めて気付く。あ、ごめん。と無意識に前へと出ていた体勢を元に戻した。

私が落ち着いたのを確認すると、和泉くんはこほんとわざとらしく咳払いをした後、「多分貴志部のことじゃないかな」と言った。

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