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『なんで昨日練習試合があったこと教えてくれなかったの！…見に行きたかったのに』
「わ、悪かったって。平日だし、場所、雷門中だったし…」
『いつだろうがどこだろうが、なにがなんでも行ったわよ！』
私の気持ち一番わかってるくせになんでよおと冗談半分泣きべそかいていると、本当にすまん、と佐久間は、いつもはきりりとしている眉をこれでもかと下げて謝る。いつもの切れ味はいずこへ…？あまりにもしおらしいので、こちらが拍子抜けだ。
『…冗談だよ、気にしないで。なんか事情があったんでしょ？サッカー部って何かと厳しいもんね』
「まあ…事情がなかったこともない、が…」
『ごめんね、気遣わせて。…もう時期地区予選でしょ？応援してる』
「…さんきゅ」
色んな言葉を飲み込んだのか、なんだか歯切れが悪い。部外者の私が口出せたことじゃないんだろうな。サッカー部は決まり事が多くて大変そう、今回もきっと、彼らが崇拝する総帥の指示で口外禁止だったんだろう。あれ、じゃあなんで棄権のことが広まって…まあ、いっか。サッカーで有名な帝国のことだから、たとえ練習試合だとしても外野が騒いだに違いない。
隣のやつが鬼道くんに呼ばれて席を離れたなんてつゆ知らず、私は、地区予選、初戦の相手校はどこかなあ、なんて考えていた。
「悪いな、佐久間」
「…急にどうしたんです、鬼道さん」
「彼女から何も言われなかったか？…いつも観に来てくれていただろう」
「ああ…」
今朝の彼女を思い出して思わず苦笑が漏れる。
「そりゃちょっと文句は言われましたけど…俺もあんな所は見られたくなかったし、何より鬼道さんの頼みですからね」
すぐ立ち直って、次の試合は絶対観に行くって張り切ってましたよ、と続ける。
「…フッ、彼女らしいな」
いつもより柔らかな笑みを浮かべる鬼道さんを見て、隣の席のあいつを思い出す。
おい佐藤、お前が試合を観に来るのを楽しみにしてるのは、どうやら俺だけではないらしいぞ。
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作者名：蛍 x他1人 | 作成日時：2023年12月28日 23時
