できない。 (ページ3)

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「おはようございます～」

休日明けの出勤はやっぱり憂鬱だ。
でも、今日は会社でも紫耀に会えたらいいなと思うと少し気持ちが穏やかになる。

「ちょっA、A」

声をかけられて後ろを見ると

「あっ、岸くんおはよ」

「おう。あの、さ…昨日のやつなんだけど」

反応を確かめるように急に口ごもる。
昨日…岸くん…

「あー、料理の！」

「おい！声でかいから！」

私よりも声を張るこの人はまあまあ仲のいい同期で友達の彼氏でもある。
その友達の誕生日が近いため手料理を振る舞いたいらしく昨晩、相談のLINEが届いた。

クリスマス、お正月そして今回。
これで3回目。
いい彼氏だとは思うけど…

「ねえ前も言ったけど岸くんが考えたメニューでいいと思うんだけど」

「いや、それは無い！」

何が無いのかよく分からないけど、そろそろ罪悪感が生まれてくる。

「それで、どうしたの？」

「…ビーツって何？」

「植物だよ。見たことないかな」

「よく分かんないから抜きでいい？」

「なんで！？」

予想外の返答に思わず声が大きくなる。
分からないから無しねってそんな簡単に料理はできません！

「えっと、だったら…」

「おいそこの2人お昼抜きになるぞー」

思ってたより時間が過ぎてたみたいで部長に声をかけられた。

「はーい。
じゃあ、近くの店で売ってないか見てみるから」

「頼んだ！」

そう言って別れて自分のための飲み物のついでに、部長に反省の気持ちを込めた分も買おうと休憩ルームに向かう。

「平野さんはどんな料理がお好きなんですか？」

私には出せない可愛らしく甘えるような声が聞こえて足が止まった。