できない。 (ページ15)

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僕らは飛ぶことができないページ15

頬に当たる風がほどよく冷たい

目を閉じるとこの世には自分だけしか存在していないのではないかと錯覚する。

最近同じようなことを考える人が増えてきたせいか「立入禁止」と書かれた紙は、鍵のかかっていない扉ではもはや意味をなしていない

病人が集う場所ならもっと配慮するものだと思っていた

死ぬ間際にこんな無駄なことを考えられるほど、割と頭の中は冷静だ

解放されたい

楽になりたい

自由になりたい

それらを手に入れられるのなら喜んで死にたい

両手を横にまっすぐ広げる。
どうして自ら死を選ぶものは決まってこのようなポーズをとるのだろう。

わからない。知らない。

どうでもいい。

あとはもう体を前に倒すだけ

ただそれだけだった。

「飛ぶの？」

誰もいないと思っていた病院の屋上には自分以外に少女がいた。
心配しているわけでもないし俺を止めようとしている風にも見えない

ただただまっすぐ俺を見て口を開く

「君、飛ぶの?」