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刹那、ドタドタと足音を立てて誰かが体育館へ向かってくる。驚いて思わず影山君を突き飛ばしてしまった。影山君は一瞬だけ苦しそうに顔を歪める。突き飛ばしてごめん。足音のした方に目をやるとそこには「お願いしやーす」と言いながら元気よく体育館に飛び込んでくる日向君がいた。なんて絶妙なタイミングで現れるんだ。ちらりと影山君を見遣ると怒りでわなわなと震えていた。何もそこまで怒らなくても。

「日向ボゲェ!!タイミング考えろ!!」

「なっなんのことだよ?!」

案の定影山君は目くじらを立てて日向君を怒鳴りつける。事情を全く知らない日向君は「いつもに増して理不尽だ」と呟きながらいそいそと準備を始めた。

「惜しかったね...さ、影山君も準備しよ」

「クッソ......一々許可取らねぇでやりゃよかった...」

「流石に許可は取って」

「...ウス」

しょんぼりと眉を下げる影山君は叱られた仔犬のようで可愛らしかった。その後も部活中何度かタイミングを見計らってはキスしてこようとする影山君を必死に抑え、何とか阻止する。ただでさえ恥ずかしいのに人前でなんて以ての外。影山君には自制心を覚えさせる必要があるな。彼が素直に聞き入れてくれるとは到底思えないが、根気よく教えを説くしかない。でもあまりに我慢させるのは流石に可哀想だからいつか2人っきりの時にでもしてやるか、と思ってしまう私はとことん影山君に甘いみたいだ。恥ずかしいと思うことをされても結局はキツく咎める事無く許してしまう。これが所謂惚れた弱みというやつなのだろうか。だとしたら私はとっくの昔にもう彼に惚れていたんだろうな。

「Aさん、手ぇ繋いでもいいですか」

「ふふっ、もうわざわざ聞かなくていいのに」

「一応許可は取っとこうと...」

「律儀だねぇ、はい」

差し出した手を彼はおずおずと繋ぐ。そんなに怯えなくてもいいのに、彼曰く握り潰してしまわないか心配らしい。私のことを気遣うその姿勢に思わずキュンと胸が苦しくなった。何度繋いでも、やっぱりその大きな手に慣れることは無い。骨ばった少し冷たいその手からは確かな温もりが伝わる。その温かさが逃げないように、私は繋がれた右手をキツく握った。

この和やかな時間が、ずっとずっと続けばいいのに。
そんな切ない願いは、神様だってきっと叶えられないだろうな。

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めいゆえ(プロフ) - まいさん» 応援していただきありがとうございます! (2022年8月29日 11時) (レス) id: 396e1f2020 (このIDを非表示/違反報告)
まい - ずっと荒らされてて可哀想。応援してます。荒らしてる方こそ良心の呵責(笑)ないのかよ (2022年8月28日 13時) (レス) id: 10ee86ddc2 (このIDを非表示/違反報告)
A - ずっと自演していて良心の呵責はないのでしょうか? もうユーザーの方を悪質ユーザーとして通報させていただきます。 (2022年8月28日 11時) (レス) id: 8276257951 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:めいゆえ | 作成日時:2022年8月28日 10時

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