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第9話:声の音色 ページ9

「すまんかったな…すぐ助けに来れんくて」

「ううん、私はなんともなかったから」

眉を下げ、心底悲しそうな声色(こわいろ)でポツリポツリと喋る服部君は何故だか私よりもショックを受けている様子だった。

「ホンマになんもされてへんのか?」

「うん」

「…ホンマか?」

この会話の繰り返し、最早彼をAIだと疑いたくなるくらいだ。心配かけてしまった事に関しては申し訳ないと思っているが、流石にここまで執拗(しつこ)く安否を確認しなくても良いと思うのだが。

「っ!ちょっと…服部君?!」

何を思ったか、彼は私をこれでもかと言うほどキツく抱き締めた。その穏やかな温もり、規則正しい心音は私の乱れた心を落ち着かせるのには十分だ。緊張が(ほど)けたのと同時に(せき)を切ったかように涙が留めなく溢れてきた。

「最初から大人しくそうしてりゃあええねん…俺はここにおるから」

彼の甘く(とろ)けそうな言葉は、傷だらけの心には染みるくらい痛くて、やけに苦しくて仕方がない。私は腕を彼の背中へ回し、服に(しわ)ができるほど力強く抱き締めた。

「…ごめんね」

「アホ、こーゆー時はな“ありがとう”が正解なんよ」

彼の胸に顔を(うず)めているので表情こそ伝わらないが、先程とは打って変わって彼の声色は私を安心させるような心地()いものだった。

「服部君…」

「…なんや」

「ありがと」

第10話:キザな瞳泥棒→←第8話:蜜蜂の訪れ



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作者名:めいゆえ | 作成日時:2022年5月15日 23時

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