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第2話:水族館デート ページ2

「今日は、来てくれてほんとにありがとう」

「いいの、ここには一度来てみたかったし…」

彼は同級生の北野武尊(たける)。先日告白され断ったところ、一度だけデートしてくれたら諦めると言われたので渋々都内で有名な水族館へ出向いたという事だ。
久しぶりのデートに、好意は無いとはいえ少しばかり心が浮つく。折角御粧(おめか)しして来たのだ、楽しまなければ損だろう。

「まずはどこから行こっか」

「そうだなぁ、イルカショーが1時からだから…クラゲのところから回れば丁度いいんじゃないかな?」

「良いね!そうしよっか」

丁寧な言葉遣いに手馴れたエスコート、それと気さくな笑み、彼が女子から人気なのも納得がいくな。それと同時に、何故(なぜ)彼が私を選んだのか疑問に思った。そんな事、私が知る(よし)もないのだが。

「…!」

「どうしたの?Aさん」

「い、いや…何でも」

どうして、どうしてこういつも邪魔ばかり入るのだ。私の視界の先には、褐色の男と、小さな男児がジッとこちらを見つめていた。何でここに居るんだと言わんばかりに。それはこっちの台詞だと怒鳴ってやりたいくらいだ。

「そんな事より!早くクラゲ見に行こ?」

「え、あぁそうだね!」

北野さんは私の歯切れの悪さに不審さを感じているようだが、そんなのお構い無し。一刻も早くここから離れたかった、彼()に捕まる前に。
横目でチラリと彼等を見遣(みや)る。あぁやっぱり…と思わずため息が(こぼ)れそうになる。彼等は不満げな顔をしたまま私達の後を着いて来ているのだ。これじゃあストーカーだと訴えられても文句は言えないぞ。

私はそんな彼等に気付かない振りをしてクラゲやサメ、イルカショーやシャチのパフォーマンスを楽しんだ。

「魚を見ながら寿司って、中々残酷だよな」

「ふふっそうね」

もう沢山歩いたので流石に足もクタクタ、やっと座れた事に安心したのか、私は尿意を催した。彼に一言声を掛け席を立つ、その頃にはもう彼等の事なんてとうに頭から抜けていた。

「随分と楽しそうやな、A」

「Aねーちゃん、あの人は一体誰なの?Aねーちゃんのなんなの?」

「…」

何故私は自ら地獄へ足を運んだのだろうか、後悔ばかりが募って()く。ただ、トイレに行きたかっただけなのに。

第3話:弁解という名の尋問→←第1話:江古田高校の日常



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作者名:めいゆえ | 作成日時:2022年5月15日 23時

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