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第1話:江古田高校の日常 ページ1

「Aさん、付き合ってください!」

今日3度目の告白。この人は確か4組の西村さんだったような、と朧気(おぼろげ)な記憶を頼りに思い出す。

「ごめんなさい、まだ誰かと付き合う気は無いの…でもありがとう」

いつものようにフォローを入れつつやんわり断る。最早定型文だ。

自分で言うのもあれだが、どうやら私は大層モテるようだ。個人的観点で見れば特別顔が可愛いという訳では無い、性格が聖母のような訳でもない。何故好かれるのか、自分でも不思議なくらいだ。

『モテる』というのはあまり良いものではない、そう気付いたのは(おおよ)(いく)つくらいの時だっただろうか。嫉妬の対象にはなるし、全てそれの所為(せい)とは言わないが同性の友達は数える程度しか出来なかった。迂闊(うかつ)に、私はあの人が好きだこの人が好きだと言いふらすと必ずその人は虐めの標的になる。それ程までに好意は単純で、(かつ)小難しいものなのだ。

「A!また告白されたの!」

「うん、4組の西村さん」

良いなぁ、と呑気に微笑む可愛らしい彼女は唯一の友、中森青子。彼女とは家が近い事もあって昔から良く遊んだりしていた仲だ。

「よっ!さっすが魔性の女!」

「ひゃっ!」

私のスカートを勢い良く(めく)るこの小生意気な男、黒羽快斗。何かと私に突っかかっては今のように意地の悪い事をする何ともガキ臭い奴だ。
やめなさいよ!と青子が言っても聞く耳さえ持たない。やっぱりこういう子供っぽい人はどうも苦手だ。

「青子の大切な友達にそんな酷いことしないでよね!」

「別にいーだろ?減るもんじゃねぇんだしよ!」

そう言って彼は彼女に向かって舌を出す。その仕草が気に食わなかったのか、青子は怒ったように声を荒らげ彼を追いかけ回した。
この光景を何度見た事か、私は思い出せそうもない。

それが、日常である限りは。

第2話:水族館デート→



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作者名:めいゆえ | 作成日時:2022年5月15日 23時

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