原石と雪男、体調悪いんだって 4

松村　拒食症(リクエスト) ページ31

松村side



「んー、もうちょっと細めがいいかなぁ」



監督に言われた、このひと言



嬉しいことにオファーをいただいて

今回は病気と闘う青年役をやらせていただくことに



病気ってことだから

健康的な見た目では挑めないと思って

俺なりに痩せて、役に入り込めた


…はずだったけど、


監督からしたらまだ甘かったらしくて




監督曰く、

病気の人特有の

頬が痩けてやつれているくらいがいい、みたいな






確かに、今の俺は

痩せはしたけど、まだ全然病人らしくない


お菓子や糖類、炭水化物は

出来るだけ摂取しない方がいいのか




今の食事方法だと

確実に納得のいく作品はできない





松村「あと何キロくらい痩せれば…？」

監督「んー、5、6キロじゃない？」




5、6キロか…

1週間頑張ればいけるな




松村「1週間ください。それまでに仕上げます」

監督「お、できる？」

松村「はい！できます！やらせてください！」






1週間


それだけ猶予をもらって

俺は体を絞ることにした





けど、これはかなり辛いことで




メンバーが美味しそうに食べてるロケ弁も

俺は食べられないわけで



森本「あれ、北斗食べないの？」

松村「あー、ちょっと役作りで」

高地「最近頑張ってるよな。結構痩せたし」

松村「え、マジ？痩せた？」

高地「マジ。顔とかめっちゃシュッとした」





でも、褒められると嬉しくなって







いつしか、


空腹が快感になっていって





食べ物なんて

本当は食べなくていいんじゃないか




なんてことまで考え始めた









そして、1週間が経った日


監督に会うと、


「最高！！これを求めてたんだよ！」



って、大絶賛してもらえて








痩せたら褒めてもらえるんだ

痩せたら誰かが俺を見てくれるんだ





そう、俺は解釈してしまって







もう食事制限なんてしなくていいのに


もう痩せる必要なんて無いのに






マネ「あれ？弁当食べないの？」

松村「んー、ちょっと体型維持のためにやめとく」







食べないで


痩せていく自分が好きで





骨ぼねしい体が、好きになっていった









でも、この時の俺は


あんなことになるなんて知らなかったし








京本「…………」






静かに向けられていた

心配の目にも









全く気付けなかった





.

.→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す