原石と雪男、体調悪いんだって 3

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岩本side



スタッフさんの焦った顔を見て

ただごとじゃない

そうすぐに感じ取れた



スタッフ「っ、深澤さんが…！」




息を切らせて

途切れ途切れになにかを伝えようとするスタッフさん


落ち着いてください、って言うと



スタッフ「落ち着けませんよ！深澤さんが倒れたんです！すぐ来てください！」





…は？


脳が追いつかなくて、



とりあえず向かおうって言ってくれた

阿部ちゃんに続いて駆け出す





倒れたってどういうことだよ

あいつ体調悪かったのか？


自問自答を繰り返しながら走って

たどり着いたのは男子トイレ




そこには人だかりができてて、




「タオル持ってきて！早く！」

「救急車まだ？！」

「深澤さん！聞こえたら指握ってください！」

「だめ！タオル足りない！大きいの持ってきて！」





バタバタと動くスタッフさんの姿




わけが分からなくて、

人だかりの間から背伸びをして中を覗く




円になって忙しなく動くスタッフさんの姿


その間から見えたのは





真っ赤な血と、色をなくしたふっかの顔






岩本「……ふっか、？」




自分から出た声は

小さくて、全然力が入ってなくて





岩本「ふっか、…ふっか！ふっか！！」




人混みを押しのけて中に入る


「ダメです！」って言う声も無視して

倒れて動かないままのふっかの姿を確認する





岩本「…なんで、」





床に落ちてるカッター


左手首に刻み込まれた無数の赤い線




そこから流れ続ける血




まさか、


これ、俺たちのせい？

俺たちがふっかを無視したから？




ドッと襲ってくる責任感




なにも考えられなくなって、

気付けばふっかが搬送されてて




最年少のラウールに肩を抱かれて

おぼつかない足取りで楽屋までの道を歩く




ラウール「…大丈夫だよ、ふっかさんなら」




俺に気を遣ってか、そう言ってくれたけど

それに頷くこともできなくて






もぬけの殻となった俺たちに突きつけられた


もうひとつの酷いこと





あのスタッフさんは、

ふっかに暴力なんて受けてなかった



ただ、俺たちがあのスタッフさんの言ったことを

全部そのまんま信じて



一方的に無視して、勘違いして

苦しんでるのも知ってたのに、見ないふりして







最低なんて言葉じゃ、片付けられない

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