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あなた「い、家、は…」
川上「…?」
さっきよりもAの震えが著しくみえる。
川上「…もしかして、この天気の中家に一人でおるの怖い?」
そう言うと小さく頷いた。
川上「…そうか。まぁ、この雨もすぐ通り過ぎるやろうし、もし帰る時に電車動いてなかったらタクシーとかで帰ればええよ。」
あなた「すみません…」
川上「大丈夫やで。人間やもん、怖いものも苦手なものも一つや二つあるもんや。…うぉ、またでっかく鳴ったなぁ。」
心なしかさっきより光ってから音が鳴るまでの時間が短くなってる気がする。
落ち着いたように見えたAもさっきまでより勢いをました雨と雷に恐怖を隠せないみたいだ。
もはや俺のパーカーの袖をぐっと握って震えてる。
小さく鼻をすする音が聞こえる。
…泣いてる。
俺はそこまで雷に恐怖心を持ったことがないから、Aが何にここまで怖がってるのかイマイチ分からない。
なんて声をかけたらいいか分からないし、何をしてあげたらいいのか分からない。
だけど、何となくいたたまれなくなって小さく震えるAの頭をポンっと叩く。
気休めにしかならないかもしれないけど、近くにあった誰のかわからないパーカーを頭から被せた。
あなた「かわかみさ、」
川上「気休めにしかならんかもやけど、なんもせんよりマシやろ。」
あなた「…ありがとう、ございます…」
バチッ
あなた「ひっ…」
川上「…うわ、まじか…」
再び轟音が聞こえたと思ったら突然目の前が真っ暗になった。
…停電してしまった。
エアコンも消え、目の前も何も見えない。
分かるのはAがどこにいるのかということだけ。
手探りでデスクの上を探すとスマホを見つけて、ライトをつける。
…ん、これは、俺のスマホじゃない。
ロック画面は俺の知ってる画像ではなかった。けど、この画像は知ってる。
あなた「…あ、それ、私、です…」
蚊の鳴くような声で教えてくれた。
川上「ごめん、勝手にロック画面見ちゃった。」
あなた「い、いえ、大丈夫、です…」
川上「…それ、Aの歓迎会の時の画像、やんな。」
あなた「…はい、」
ライトのおかげで小さく見えるようになったAは、少し恥ずかしそうに頷いた。
また白く光って派手に轟音を響かせてる。
あなた「きゃぁぁ!」
停電も相まっていよいよ恐怖が限界に達したのか、Aは俺に抱きついた。
突然のことで驚いたけど、こうやって頼られんのも、悪くは無いかな、なんて思ったり。
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蒼暉(プロフ) - 現実逃避あるふぁさん» そう言っていただけて嬉しいです!これからも応援よろしくお願いします! (2019年10月2日 20時) (レス) id: 9d4d633b18 (このIDを非表示/違反報告)
現実逃避あるふぁ - このお話めっちゃ好きです!更新待ってます! (2019年9月28日 21時) (レス) id: 9e6e3a6762 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼暉 | 作成日時:2019年9月8日 0時