Tell me.【Kishi/Hirano】 (ページ10)

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『へぇ～』

ま、一途なのは岸らしいと思う。
耳まで真っ赤にした岸はじろじろみんな、なんて照れていた。

「気になんねぇの？」

『何が？』

「俺の、好きなヤツ」

気になるといえば気になるし、ならないといえばならない。
分からないのだ。私にも。
別に岸の好きな人を聞いたところでメリットがあるわけでもないし。

『ん～、岸だしなぁ』

「なんねぇのかよ!」

やっぱり、私たちに色恋沙汰なんて似合わない。喋っている途中で言い合いになった。
でも、友達のこの距離が、丁度いい。

「ん、着いたぞ。」

いつの間にか海に着いたようで。
私はヒールを脱ぎ捨て砂浜に降り立った。

頬を掠める潮風の匂いが、なんとも心地良い。
周りには私達以外いなくて。
貸し切りのような優越感に浸ることができた。

「ん、これやる」

ふいに、岸が何かを差し出す。
それは、太陽の光を反射してキラキラと煌めいていた。

『何これ』

「シーグラス。」

『シー、グラス…？』

「ビンの割れたやつが、波に打たれて角が丸まるんだよ。それが、シーグラス。」

『ふーん』

端からみればゴミかもしれないけれど。
目映く光輝いたシーグラスはとても、綺麗だと思った。

『大事にする』

「別に、海にこればいつでもあるけどな」

『ううん、岸がわざわざくれたんだもん。
大事にしなきゃ』

ほんとお前のそういうところだぞ、なんて言葉は。
小さくて私の耳には届かなかった。

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