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「ま、そんなことは置いといて」
何が「ま、そんなことは置いといて」や。
人に散々怒鳴らせて。
しかも、“そんなこと”言いよったで？
失礼ったりゃありゃしない。
そんなこと構いもなく海人は喋りだす。
「廉、今度の文化祭なんだけどさ…」
『おう!よくぞ聞いてくれた!
俺はAとまわるで!』
「いや、そういうことじゃなくてさ…」
毎年10月にある文化祭。
確か、うちのクラスはサバゲー屋とか言ってたな。
当日の運営係は数人しかいなくていいから、まぁ、１日暇なわけで。
そしてさっきからおずおずと俺の目をみる海人。
なんか嫌な予感するな…
「廉、ミスターコンでない？」
『絶対いやや』
はい、当たりー。
毎年文化祭恒例ミスコン&ミスターコン。
どうやら今年は海人が運営係らしい。
俺は毎年誘われるけど、全部断っている。
目立つの苦手やし、何よりAと一緒におりたいからな。
「人手不足なんだよ〜、
お願い、れ・ん？」
『きもちわる』
大きな瞳をぱちぱちさせて俺に頼み込んでくるけど、男からしたら複雑やわ。
そっかぁ〜残念、と肩を落とす海人。
「じゃあ、参加者は、
紫耀先輩と、岸先生、それから…」
ひぃ、ふぅ、みぃ、と数え出したところで俺はまたカフェオレを飲んだ。
しかし、飲み込むよりも先に。
「ミスコンに、Aちゃん」
『…は？』
ミスコンで聞き覚えがない名前が飛び出した。
俺的にはよく知っとる名前やけど。
『俺、Aに出場許可出してないんやけど』
「束縛彼氏じゃん、こわいよ〜」
毎年Aもミスコンに誘われるから、俺が必死で阻止してるんやけど。
中学の頃からやから、さすがにもう自分でもでえへん言うやろと思って。
甘くみとったわ…
「どう？出る気になった？
ミスターコン」
そうニタニタしながら俺に聞いてくるこいつが、鬱陶しくてしゃあない。
『お前ずるいぞ』
「ミスコンにでたらAちゃん、誰かにとられちゃうかもよ〜」
うるさいな、もう。
そんなん答え一つしかないやんか。
『俺も出るわ、ミスターコン』
すると海人は口の端をキュッとあげ、
「そうこなくっちゃ」
と呟いた。
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作者名：いすず x他1人 | 作成日時：2019年5月22日 21時
