林檎の蜜は恋の味《桃》

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ひとり俯いて笑っていたら

ふわっといい匂いに包まれた。




『無理して笑うなよ』




今私佐久間さんに抱きしめられてるんだ。




細いのに意外とガッチリしてるんだな、とか

キンモクセイのいい香りがするな、とか

佐久間さんにこうされるの安心するな、とか

そんなことを思った。




『俺の前では全部曝け出していいから、

俺の前で無理しなくていいから、

辛い感情押し込もうとするなって。

そんな辛そうな顔して笑うなって。』




佐久間さんの温かい言葉が心に響いて

涙が溢れ出る。




私、辛かったんだ。

だからこんなに涙が出るんだ。




どうやって別れようって事で頭がいっぱいで

自分が辛いなんて考えてなかったな。





佐久間さんと出会わなかったら、今頃どうなってたんだろう。




辛いって気づいた時、ひとりで雨に濡れながら泣いてたのかな。




『そうそう、ちゃんと泣けるじゃん。

だーいじょうぶ、今日は俺がいるから』





なんでだろう。

佐久間さんの言葉は、なんだか凄く安心する。




男性にしては高くて、優しい声色だからかな。




『話に夢中で忘れてたけど、体冷えてるからシャワー浴びといで？』




「いやでも佐久間さんも…」




『にゃは、俺男だよ？大丈夫だって！笑

それに女の子は体冷やしちゃだめだから』




早く行ってきな！と背中を押される。





声をかけられた時は

"ピンク髪のチャラいお兄さん"ってイメージだったけど




話してみてそのイメージは払拭された。




今の佐久間さんのイメージは

"ピンク髪の優しいお兄さん"




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