45話 ページ47
屋上を出て保健室に寄った後(艶本にちゃんと礼は言った。お礼が言えてえらいわネ、と褒められた)、馨はまた校内の散歩を始めた。
家康に遭遇できればいいな、くらいの気持ちで歩いているのだが、面白いほどに遭遇しない。
まるでお互いが正反対の道を進んでいるかのように。
「…………飽きましたわ」
しばらくぐるぐると校内を歩いていたが、流石に5週目で飽きたようだ。むしろ家康と一度も遭遇せずに5週もできた事を褒めたいくらいだ。
「あのゴミどもに構うのにか?」
突然背後から聞こえてきた声に驚き、左ポケットから出したばかりの飴が派手な音を立てて床に落ちた。
まるできゅうりを見た猫のように飛び跳ねて距離を取る馨。
「っ、急に背後に忍び寄るのはおやめくださいませ」
「何もしていないのだから問題あるまい」
「…………寿命が縮まりますわ」
そう言うと、ハッ! と鼻で笑われた。
サングラスを取ろうと腕を上げただけで身構える馨を見て、家康は声を上げて笑った。内心、馨には何もしていないのに、随分と嫌われたなと思っている。
「少し話をしないか」
「奇遇ですわね、私もあなたとは一度話をしておきたいと思っていましたわ」
てっきり逃げ出すと思っていたのだが、思わぬ返答に僅かに気分が上がる。
「お前はあの時、ゴミどもはゴミではなく人間だと言ったな」
「ええ、そうですわね」
「何故庇う? お前の人生に関係ない奴らばかりだろう」
「同じ時代を生きているクラスメイトですから」
「くだらん情だ」
「そうかもしれません、でも私はそれでもいいと思っていますから。私の決断にとやかく言えるのは私だけですわ」
「それは、あのゴミもか」
それが誰を示すのか、馨にははっきりとわかっていたが敢えて知らないふりをした。自分の唯一をゴミ扱いされて黙っていられるような人間ではない。
「さあ、誰のことやら」
「…………いつも一緒にいるやつだ。よく膝に乗っているだろう」
「あら、案外ちゃんと見ていますのね」
ゴミだなんて言うものだから、てっきり周りに興味がないのか、という皮肉を込めて言えば、あれだけべったりしていれば嫌でも目に入ると返された。
「清正様とだって、ぶつかる時はありますわよ」
正直に言えば意外だった。この純真無垢な娘でも、誰かとぶつかる事があるのかと。それと同時に、傷付けてみたくなった。
「なぁ……お前は─────────」
馨の返答は……
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タカコ(プロフ) - 嬉しいです!楽しみにしてます! (2022年10月6日 11時) (レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» 旗印戦のあれこれは本編にねじ込む予定です。馴れ初めは番外編に入れてもいいかもしれませんね! ご意見ありがとうございます! 近日中に出す続編でも番外編について触れてみようと思います! (2022年10月6日 11時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - はい、最終回後の話やドラマでは無かったオリジナルの旗印戦、加藤くんと夢主ちゃんの馴れ初めなんかを読んでみたいです(*≧∀≦*) (2022年10月6日 8時) (レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» コメントありがとうございます! 今のところ考えてはいませんが、こういうシチュエーションが見たい! という希望が多く集まればやる可能性もあるとは思います。最終回より後の話を番外編にするのもアリですね🤔 (2022年10月6日 2時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - Chiharuさん、一つ質問します。この小説の番外編って作る予定は無いですか? (2022年10月5日 23時) (レス) id: 3e1c504208 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Chiharu | 作成日時:2022年9月25日 5時