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43話 ページ45

「その方の負傷の程度にもよりますわ」

「心配するほどじゃない。今頃何処かで手当てでもしてるだろう」

黒田程の人間が自分と話をしたがるわけがないと、どうにか断ろうとするが黒田も諦める気はないらしい。やがて馨が折れた。渋々黒田の隣に座る。
ただ、最後の抵抗と言わんばかりに人1人分開けていたが。

「そう警戒するな……と言っても無理か」


お前はあのクラスで、加藤以外の人間を誰も信用していないからなぁ


その言葉を聞いた瞬間、馨の心臓が大きく跳ねた。まさかバレているとは思っていなかった。上手く隠しているつもりだったし、バレるような事をした覚えもない。
耳元でバクバクとうるさい音が鳴る。思考が上手く回らない。

「独り言には気を付けるんだな。聞こえていたぞ。仲良くなるのが怖い、と」

「! 盗み聞きですか? あまり褒められたものではありませんわね」

「怒るな怒るな。だが、わざと聞いていたわけではない。本当にたまたまだ」

「たまたま……信用できませんわね。だってあなたは旦那様に旗印戦を出すよう仕向けさせた人ですもの」

今度は黒田が驚く番だった。あの様子からして、加藤は何も話していないはずだ。なのに知っているという事は……予想外の収穫に思わず口角を上げる。

「はは、面白いな」

「こっちは何一つ面白くありませんわよ」

「お前は猫のようだなぁ、山崎」

それも、飼い主以外には懐かないタイプの。

「、は?」

突然の猫扱いに素っ頓狂な声を上げるも、黒田は聞いちゃいない。ご機嫌に何か考え事をしている。これ以上話していても時間の無駄だと思い、この場から立ち去るべく立ち上がる。

「いいのか? これが誰のか聞かなくて」

「ええ。血の跡を辿ればいいだけですから」

もっと早く気付けばよかったと、後悔するがもう遅い。黒田は、ようやく気付いたかと肩を震わせて笑っていた。

「もうっ! 黒田様なんて、徳川様に旗印戦でぼっこぼこにされればいいですわ」

「待て待て、恐ろしい事を言うな」

それでは! と歩き出そうとする馨の腕を掴み引き留める。その顔は、先程までとは違い随分と穏やかなものであった。

「ふ、これをやろう。生憎今はそれしか手持ちがないが…………盗み聞きの件はそれでチャラにしてくれ」

「え?」

「ああそれと、今のは俺達だけの秘密だ。誰にも言わん」

それじゃ、と黒田は何処かに行ってしまった。馨の手には、棒付きキャンディーが一つ転がっていた。

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タカコ(プロフ) - 嬉しいです!楽しみにしてます! (2022年10月6日 11時) (レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» 旗印戦のあれこれは本編にねじ込む予定です。馴れ初めは番外編に入れてもいいかもしれませんね! ご意見ありがとうございます! 近日中に出す続編でも番外編について触れてみようと思います! (2022年10月6日 11時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - はい、最終回後の話やドラマでは無かったオリジナルの旗印戦、加藤くんと夢主ちゃんの馴れ初めなんかを読んでみたいです(*≧∀≦*) (2022年10月6日 8時) (レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» コメントありがとうございます! 今のところ考えてはいませんが、こういうシチュエーションが見たい! という希望が多く集まればやる可能性もあるとは思います。最終回より後の話を番外編にするのもアリですね🤔 (2022年10月6日 2時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - Chiharuさん、一つ質問します。この小説の番外編って作る予定は無いですか? (2022年10月5日 23時) (レス) id: 3e1c504208 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Chiharu | 作成日時:2022年9月25日 5時

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