40話 ページ42
「もうい〜いかい?」
伊達の静かで落ち着いた声が響く。こんなに低い「もういいかい」を聞くのは恐らくこれが最初で最後だろう。
次いで……
「ま〜だだよ」
「んふ!」
これほどまでに面白いかくれんぼの口上が他にあるだろうか。しかも
「ハハハ……」
「「「「ハハハ……」」」」
「あははっ! 面白すぎますッ!」
笑いすぎて今にも笑い死にそうな馨の背中を優しい眼差しで擦る伊達。どこからどう見てもその姿は兄のそれだ。
「馨嬢、君も反家康同盟に参加しているのではないのか?」
「嬢……? いえ、私は反家康同盟には参加しておりませんよ」
「そうなのか……?」
名前呼びに続き嬢呼びに戸惑いつつも、そういえば先程否定し忘れていた事に気付く。
ちなみに伊達は色々な呼び方を試してようやくこの呼び方に落ち着いたようだ。加藤の大切なお姫様という意味で、馨姫と呼ぼうとしたが、お嬢さんの方がしっくりきたらしい。
「私は反家康同盟には参加できませんが…………その代わり、明智様と個人的に契約を交わしました。まあ、やる事は皆様方と大差ないんですけれどね」
「契約……でございますか?」
そうですわと笑いながら、馨はいつもの飴を舐める。
「それでは私は一度旦那様の元へ行きますので」
何だかこのまま教室にいては、同盟参加を求められそうだと思い、早々に逃げる事にした。
「あら、武田様」
「昨日ぶりだな」
「ええ、でもまさかこんなに早く会えるとは思っていませんでしたわ」
教室を出てすぐの所で武田と遭遇した。昨日よりかはまだマシな顔をしているが、相変わらずの思いつめたような表情は変わらない。
あまりにもじっと見られるので、何処か居心地が悪い。
「あの……何か御用でしょうか?」
「ああ、これ……昨日の礼だ」
そう言い武田が馨に渡したのは、大量の棒付きキャンディーだった。両手で持っても溢れそうで、急いでポケットに入れる。
「あ、ありがとうございます」
「それだけだ。じゃあな。ああ、そうだ。飴は咥えず、手に持っとけよ」
武田は、馨が行こうとしていた方向とは逆方向に進んでいった。
「ふふ、本当に特進クラスは面白い方々が多いですわね」
言われた通り飴を手に持ちながら人気のない廊下を進む。一歩ずつ緩慢に進むせいで、コツ……コツ……とブーツの音がやけに響く。
「でもその分、仲良くなるのが怖いですわ…………」
その言葉を、影で誰かが聞いていた。
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タカコ(プロフ) - 嬉しいです!楽しみにしてます! (2022年10月6日 11時) (レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» 旗印戦のあれこれは本編にねじ込む予定です。馴れ初めは番外編に入れてもいいかもしれませんね! ご意見ありがとうございます! 近日中に出す続編でも番外編について触れてみようと思います! (2022年10月6日 11時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - はい、最終回後の話やドラマでは無かったオリジナルの旗印戦、加藤くんと夢主ちゃんの馴れ初めなんかを読んでみたいです(*≧∀≦*) (2022年10月6日 8時) (レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» コメントありがとうございます! 今のところ考えてはいませんが、こういうシチュエーションが見たい! という希望が多く集まればやる可能性もあるとは思います。最終回より後の話を番外編にするのもアリですね🤔 (2022年10月6日 2時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - Chiharuさん、一つ質問します。この小説の番外編って作る予定は無いですか? (2022年10月5日 23時) (レス) id: 3e1c504208 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Chiharu | 作成日時:2022年9月25日 5時