【新・信長公記】桜馨るこの日々に

37話 ページ39

「旦那様！！！！！」

「遅かった……って、何でそんなにテンション高いくさ」

「ふふ、実は色々あってみやび様に占っていただいたんですけど、すごかったんですよ！ 私めは帰りにノートを買って帰ろうと思いますっ。旦那様もみやび様の占い、如何です？」

「いや俺は…………」

断ろうとしたがあまりにも純粋でキラキラとした眼差しで見られてしまえば断りにくい。結局、後で占ってもらうという結論に至った。

「そうだ旦那様。今日は寄り道ついでにデートでも行きませんか？ 私クレープ食べたいです」

「たまにはよか、存分に遊びつくすくさ」

「はい！」

実際、馨がこんな事を言うのは珍しかった。普段舐めている飴に混じった薬のせいで、食欲は常人の半分以下。1日に3食きちんと食べる事はなく(加藤が来た時はきちんと食事の用意を2人でするが)、これが食べたいあれが食べたいというのは年に数回あるかないかだった。

2人で何処に行きたいか相談していたら、あっという間に時間が過ぎ去っていた。それに気付いたのはチャイムの音を聞いた時だった。

「皆さん。新しい公認旗印が出ました。旗印提出は……」

思わず2人もスクリーンを見つめる。誰が誰に出した旗印なのだろうか。少なくとも、2人には心当たりが一切なかった。

「特進クラスの徳川家康君」

「あら、豊臣様大丈夫でしょうか」

「……一応まだ秀吉がターゲットだって決まった訳じゃないくさ」

しかし2人の中では次のターゲットは秀吉だとほとんど確定されていた。

「家康君が出した旗印はこちらです」

「なっ！」

『24時間以内に明智光秀を倒す』それが家康の出した旗印だった。
予想外の内容に、驚いて立ち上がる2人。

「なお、旗印戦は家康君の指定により明日の正午から開始いたします」

「徳川様は何をお考えなのでしょう……」

「それがわかれば苦労はしないくさ」

「それもそうですわね」

自分たちに出来る事は何もないと思い、何処に遊びに行くかの相談を再開させた。それが終わる頃にはかなり時間が経っていたが、今から遊びに行ってもそう問題はないだろう。

「行きましょう……って、明智様？」

空き教室を出てすぐに明智と遭遇した。まともに話すのは調理実習以来初めてなので、少し緊張する。

「はっ、みやび様の占いが当たりましたわ……」

「あの……？」

「あ、いいえ何でもありませんわ。ところで、何か用事でしょうか？」

「はい。お2人、特に山崎さんにお話があるんです」

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