21話 ページ23
みやびと別れた後、馨は加藤を探すべく校内をうろついていた。教室に一度戻ったのだが、そこには誰もいなかったのだ。
「だぁれもいない……」
日が暮れた校内に残っている人間はいないのか、馨の呟きは薄暗い廊下に解けて消えた。何処に行っても人間の気配を感じられずじわじわと心細くなってくる。
「なんだかひとりになったみたい」
まるで、十数年前のあの時のように。馨の脳裏に、ある記憶が浮かびあがる。小さな女の子が泣きながら広い家を彷徨う記憶。それを忘れるように頭を軽く降り、再び加藤を探し歩き回る。しかし、いくら探しても人っ子一人見つからない現状に思わず泣きそうになってしまい、そんな気持ちをかき消すようにしゃがみ込んだ。
このまま誰も見つからなかったらどうしよう、と不安な気持ちが押し寄せる。
「きよまささまに……あいたいなあ………………」
「馨……？」
「……！」
愛しい人が自分の名前を呼ぶ声が聴こえ、思わず俯かせていた顔を上げる。そこには、ずっと探していた加藤の姿があった。心配そうな顔で、馨と目を合わせている。
「こんな所で何しとった？」
「きよまささまぁ……！」
「うぉっ」
夢じゃないと確かめたかった。今目の前にいる加藤が、自分が作り出した都合のいい幻なんかじゃないとわかる証明が欲しかった。
急に思いっきり抱きついたからか、加藤は受け止めきれずにそのまま後ろに倒れ込んでしまう。
「危な……！ 馨！ 飴食べて……はなかとか。馨、何かあ……」
「んむ」
加藤の身体に乗り上げたままで、馨が口付けた。
普段彼女がつけているリップの桜の香りが、加藤の鼻腔を擽る。
そのまま背中に手を回しそうになるのを何とか堪え……
「馨、こっち」
馨の身体を起こし、手を引いて近くの空き教室に入った。念のため鍵をかけた後、教壇の下に隠れるように座る。
「ここなら誰にも見つからんくさ」
馨を抱えるように座っている彼は、未だ涙を浮かべる彼女の顔を愛おしそうに見つめる。
「きよまさ、さま…………」
「うん」
「だれも、いなくて…………さびしくて。また、おいていかれちゃったのかなって」
「すまん、あの後黒田に呼び出されて話が長引いたくさ。教室戻ったら馨がおらんくて…………でも馨、俺がお前を置いて行くなんて事は絶対になか」
「……うん」
暫く見つめ合い、気が付けば互いの唇が合わさっていた。
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タカコ(プロフ) - 嬉しいです！楽しみにしてます！ (2022年10月6日 11時) (
レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» 旗印戦のあれこれは本編にねじ込む予定です。馴れ初めは番外編に入れてもいいかもしれませんね！ ご意見ありがとうございます！ 近日中に出す続編でも番外編について触れてみようと思います！ (2022年10月6日 11時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - はい、最終回後の話やドラマでは無かったオリジナルの旗印戦、加藤くんと夢主ちゃんの馴れ初めなんかを読んでみたいです(*≧∀≦*) (2022年10月6日 8時) (レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» コメントありがとうございます！ 今のところ考えてはいませんが、こういうシチュエーションが見たい！ という希望が多く集まればやる可能性もあるとは思います。最終回より後の話を番外編にするのもアリですね🤔 (2022年10月6日 2時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - Chiharuさん、一つ質問します。この小説の番外編って作る予定は無いですか？ (2022年10月5日 23時) (レス) id: 3e1c504208 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Chiharu | 作成日時：2022年9月25日 5時
