5話 ページ7
「もう……」
離す気はないらしい。腹に回された腕に力を入れられるだけだった。
「山崎馨」
「はい……」
肉山は加藤の膝に座ったままの馨をしばらく見ていたが
「………………龍造寺隆信」
いいの!? クラス全員そう思った。
「もうっ! とても恥ずかしかったのですよ!」
「ふっ、悪かったくさ」
今日は授業もないため早く終わったのだが、帰り道馨は加藤に抗議していた。
「悪いと思っておりませんわね……!」
「ああした方が馨はこの加藤清正のだと知らしめられるくさ」
「他にも方法はあるでしょうに……いえ、別によいのですけれども」
ぶつぶつと未だ何か呟く馨を心の底から愛しそうに見つめる加藤。頭を撫でようとしたその時
「そうでしたわ、清正様。今日は泊まっていかれます?」
「そうするくさ」
「わかりました。ふふ、楽しみですわね」
先程までの不機嫌さは何処へやら。帰ってからもずっと一緒なのにも関わらず、楽しみと言う馨。彼女のこういうところが愛おしい、と上機嫌な表情を見て思う。
実は馨は諸事情により1人で暮らしている。それも、大きな一軒家にたった1人。
そのため加藤は、彼女が少しでも寂しさを感じないようにちょくちょく泊まりに行くのだ。
「あら……? 何か届いて…………あぁ」
差出人の名前を見て表情を消す馨に、いつものかと加藤は理解した。馨の両親は製薬会社に勤めており、あの飴の薬を作っているのも両親だ。
仕事熱心すぎた彼らは、娘を日本に残し海外転勤。その後の交流は定期的に飴を送る事のみで、手紙もメールも電話も一切ない。
「これ、仕舞ってきますので……清正様はお好きなようにしていてくださいね」
「ん……」
いつもそうだ。彼女に何と声をかけていいかわからず、結局何も言えないまま。加藤は拳を握りしめた。
「お待たせしてしまいました。何かお飲みになりますか?」
戻ってきた彼女はまたうきうきしたような雰囲気に戻っていた。それに安心して、甘えてしまう。いつか言える日がくれば、と思いながらも楽しくお泊りをした。
深夜、隣で眠る加藤に
「お慕いしております、清正様。けれど……私と一緒にならない方が、きっと幸せになれるのですよね」
これは、彼女だけの秘密。
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見切り発車で始めましたが、こんな感じで進めていこうと思っています。
もっとイチャコラさせてもいいのかもしれない。
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タカコ(プロフ) - 嬉しいです!楽しみにしてます! (2022年10月6日 11時) (レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» 旗印戦のあれこれは本編にねじ込む予定です。馴れ初めは番外編に入れてもいいかもしれませんね! ご意見ありがとうございます! 近日中に出す続編でも番外編について触れてみようと思います! (2022年10月6日 11時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - はい、最終回後の話やドラマでは無かったオリジナルの旗印戦、加藤くんと夢主ちゃんの馴れ初めなんかを読んでみたいです(*≧∀≦*) (2022年10月6日 8時) (レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» コメントありがとうございます! 今のところ考えてはいませんが、こういうシチュエーションが見たい! という希望が多く集まればやる可能性もあるとは思います。最終回より後の話を番外編にするのもアリですね🤔 (2022年10月6日 2時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - Chiharuさん、一つ質問します。この小説の番外編って作る予定は無いですか? (2022年10月5日 23時) (レス) id: 3e1c504208 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Chiharu | 作成日時:2022年9月25日 5時