35話 ページ37
「あら? 武田様」
まだ友人らと談笑するらしい加藤に散歩してくると告げ訪れた屋上で、馨は武田を見つけた。旗を持っているのを見る限り、誰かが彼に届けたようだ。馨は柵に凭れ掛かるように座る武田の横に座る。
「……何しに来た」
「お散歩ですわ。そうしたら武田様を見かけたので」
嘘を吐いているようにも見えなかったため、武田はそれ以上何も文句は言ってこなかった。
ただ……
「また飴咥えて……手で持っとかねえと危ねぇだろうが」
「また……?」
「入学式の時、話が聞こえてきた」
「お恥ずかしい、聞かれてしまっていましたか。そういえば武田様、お怪我の具合は如何ですか? まだ大丈夫そうには見えませんけど……」
「そういえば、救急車呼ぶよう色々してくれたのはお前なんだってな。ありがとよ」
まさかお礼を言われるとは思っておらず、突然の事に戸惑う馨。わちゃわちゃと両手を動かしながら返事をしている様は、誰がどう見ても動揺しているというだろう。
そんな馨を微笑ましそうに見つめ頭を撫でた後、もう行けと突き放すように言った。
「なぜ急にそんな事を……?」
「あんまりお前を独り占めしてると、怖えのが来るってのが1割。残り9割は心配だ。アイツは何でかお前に目を付けてる。俺と一緒にいると、お前まで危なくなる。俺みたいに、光さす道に戻れなくなるぞ」
「武田様……」
何かに耐えるように俯く馨を見て、言いすぎたのではと焦るも
「むぐっ!」
「あまりそういう事を言わないでくださいまし」
甘い方の飴を口に突っ込まれていた。ちなみに山梨のぶどう味だ。
「私、まだまだいっぱいお話がしたいんですよ? そんなこと言われたら寂しいじゃありませんか。それに、武田様はまだ太陽の道を歩いていますよ。太陽の光がなければ輝けない、月の道を歩くような私とは違って」
不意に憂うような顔をする馨。
その言葉の意味を聞こうとするも、馨は話は終わりと言わんばかりに立ち上がる。
「まだ時間はかかるかもしれませんけど……私は待っておりますよ。だから、またお話してくださいませ」
屋上のドア付近でそうだ、と振り返る。
「あの時、宙を飛んでいた武田様はとても格好よかったですよ!」
ニコッと嬉しそうに笑ってそう言い、馨は屋上から出て行った。
1人残された武田は飴を舐めながら
「ありゃ、皆が可愛がるのも頷けるな」
と呟いていた。
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タカコ(プロフ) - 嬉しいです!楽しみにしてます! (2022年10月6日 11時) (レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» 旗印戦のあれこれは本編にねじ込む予定です。馴れ初めは番外編に入れてもいいかもしれませんね! ご意見ありがとうございます! 近日中に出す続編でも番外編について触れてみようと思います! (2022年10月6日 11時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - はい、最終回後の話やドラマでは無かったオリジナルの旗印戦、加藤くんと夢主ちゃんの馴れ初めなんかを読んでみたいです(*≧∀≦*) (2022年10月6日 8時) (レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» コメントありがとうございます! 今のところ考えてはいませんが、こういうシチュエーションが見たい! という希望が多く集まればやる可能性もあるとは思います。最終回より後の話を番外編にするのもアリですね🤔 (2022年10月6日 2時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - Chiharuさん、一つ質問します。この小説の番外編って作る予定は無いですか? (2022年10月5日 23時) (レス) id: 3e1c504208 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Chiharu | 作成日時:2022年9月25日 5時