101話 ページ3
何だか壁の向こうから声が聴こえる。よくよく聞いてみれば峰田君や飯田君達の声。
「壁とは超えるためにある！！ 『Plus ultra』！！」
「速っ！！」
「校訓を穢すんじゃないよ！！！」
ポムッポムッポムッポムッ！ と無駄に早い音楽が聞こえてくる。そういやI・アイランドでも壁登ってたもんなぁ、この程度なら造作もないってか。
けれど、
「ヒーロー以前にヒトのあれこれから学び直せ」
洸太君が壁と壁の間から飛び出て、峰田君の手を叩き落とした。年下に正論言われるヒーロー志望ってどうなんだろ。
「くそガキィィイィ！！？」
「やっぱり峰田ちゃんサイテーね」
「ありがと洸汰くーん！！」
「わっ……！？」
洸太君がこっちを見た瞬間、落下してしまった。子どもとはいえやっぱり男の子。ちょっと刺激が強かったかな。
でもすぐに緑谷君が助けてくれたみたいで安心した。
「ちょっ、あっつ！ あついって！！」
「え、何事？」
葉隠ちゃんの問いには、エルキドゥが答えてくれた。なんか鎖の音が聞こえるんだけど。
「今この不審者を捕まえたんだ。ごめんね、温泉の気持ちよさについて焦凍と話していたら反応が遅れちゃったんだ」
「洸太君が防いでくれたから大丈夫だよ、ありがとねランサー。ところであついって何？」
さっきからずっと壁の向こうで響き渡る鎖の音と絶叫。何ここ地獄？
「ちょ、轟！ お湯沸騰するって！」
「反応が遅れた自分への怒りで温泉のお湯を沸かしてるんだ。それにみんなが慌てて避難してるんだけど……ちょうどいいね。そこに沈めようか」
何を、とは言わずもがな、A組の汚点である。何度痛い目見ても同じこと繰り返すし、ちょっとキツイおしおきを与えなきゃかもね。その証拠に女子一同、それじゃ温くない？ みたいな顔をしている。
「優作……」
「聞いたこともないくらい弱々しい声！」
「わりぃ、不愉快な思いさせたよな。他の女子も……」
「イケメンが過ぎる……！」
すごい、どんどん焦凍くんの株が上がっていく。そしてエルキドゥも。
「あ"ぁぁづあ"ああぁぁぁぁ！！！！」
バッシャーンという派手な音と共に、峰田君の絶叫が響き渡る。その水しぶきを浴びた何人かの悲鳴も。
「じっ、慈悲ィィィィ！ 慈悲をくれぇぇぇえええ！」
「は？」
うわ今まで聞いたこともないくらいの低い声！！
これに懲りてもう何もしないでくれるとありがたいなぁ。
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作者名：Chiharu | 作成日時：2021年8月23日 2時
