125話 ページ27
『睡蓮〜!!』
次の日。兄様は泣きながら私に話しかけていた。昨日、無造作に切ったであろう髪は、今日になると整えられていた。母様にやって貰ったんだろうな。
『兄様どうしたの? そんなに泣いて……』
『────ともう会えなくなっちゃったんだ』
『? それって、その子の名前?』
『いや、本名忘れたから、そう呼ぶ事にしてただけなんだけど。それより、あいつ人魚だって言ったろ? 大人に見つかりそうになってたから、逃したんだ。もうここには来るなよって、言ったから……』
泣いていたけど、すぐに明るい顔に戻った。
『でさ! そいつ、俺らと違う世界の人だって言ってたんだ! だから俺、いつかそこに行こうと思う! その時は、睡蓮! 一緒に行こう!』
兄様の夢は、異国に行って世界を知る事だった。それを、いきなり違う世界に行くって言い出すなんて、と、この時の私は半分くらい呆れていた。
けど、兄様となら何処でも楽しそうだと、快く返事をしたんだったっけ。
その日から、兄様は色んな事を学び始めた。南蛮人に会いに行ったりしたし、暇さえあれば海を見に行っていた。そんな兄様の隣で、私も色々学んだんだよね。
でも三年後、兄様は帰らぬ人となった。三人きりになった家族。その翌年両親もまた、帰らぬ人となったけど。まあ、今思い出してる場合じゃない。
記憶の世界が音を立てて割れていく。硝子が砕けるような音を立てて崩れた世界。やがてそれらが収まると、私はいつものように、真っ暗な所に立っていた。
「冷たい…………」
水が足首ほどの高さまで張っている。一歩進むたび、ちゃぷ、と音を立てて波紋が広がる。
少しだけ歩きにくいけれど、文句を言ってる場合ではない。
「僕の居場所はいつもタコ壷の中だけだった」
あずーるさんの声が聞こえた。すると、程なくして子供の声が辺りに響いた。
『やーい、アズールズルズル、墨吐き坊主!』
『さっさと拭けよ。足ならたくさんついてるだろ』
『や、やめてよぉ……。な、何でそんなこと言うの?』
子供ってどうしてこうも時に残酷なんだろうか。自分がされたら嫌な事は他人にしない。こんなの小さな子供でもわかるのに。
「ほかの人魚と違って吸盤が沢山ついた足。引っ込み思案でハッキリものも言えない。勉強も運動もてんでダメ。__僕は、いつも1人ぼっち。グズなノロマな、タコ野郎」
自己評価がかなり低い。今の彼とは大違いだ。
だからこそ、なのだろうか。
ラッキーカラー
あずきいろ
452人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
オタクの夢(プロフ) - 初めまして。突然のコメント失礼します。アンケートの答えは2でお願いします。 (2020年7月11日 21時) (レス) id: 16ffb5e192 (このIDを非表示/違反報告)
メリ助(プロフ) - いつも作品を楽しみにさせてもらっています!アンケートは2でお願いします!続き頑張ってくださいっ! (2020年7月11日 20時) (レス) id: edf0a2913a (このIDを非表示/違反報告)
ほのか(プロフ) - 2でお願いします!続き楽しみにしてます! (2020年7月11日 5時) (レス) id: 90cb15719b (このIDを非表示/違反報告)
アリス(プロフ) - 2でお願いします!無理せず更新頑張って下さい! (2020年7月11日 2時) (レス) id: ad5ac1eb93 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ(プロフ) - 2で、お願いします (2020年7月11日 0時) (レス) id: 868bfc1b28 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Chiharu | 作成日時:2020年6月27日 16時