3 ページ3
…下なんか見なきゃ良かった。
死にたい死にたいって思いながら生きてるのに
いざ死ぬとなると怖くて足が動かない。
生きてても、いいことなんかひとつもなかったじゃん。
ここほど高いところから落ちたら、一瞬だよ。
一瞬の痛みで、長い苦痛が帳消しになるのに。
「危ないですよ。そんなことろにいちゃ」
『…誰』
後ろから声がして振り向くと、赤い大きな翼の男が立っていた。
「まじか。俺けっこう名前知られてると思ってたんだけど」
『だれ』
「ホークスです。速い男で有名な」
『ヒーロー？』
「まぁ一応そうです」
皮肉だなぁ
死ぬ直前に会話したのが憎きヒーローだなんて。
ホークスと名乗るその男は、死のうとしてる人を目の前にしてニコニコヘラヘラしていた。
『私、ヒーローが嫌いなの』
「悲しいなぁ。どうして？」
『全部壊したから。悲観的になって街壊したりしないだけ褒めて欲しいくらいヒーローが嫌いなの』
「悲観的になって死のうとしてるじゃないですか」
『私がどんな気持ちで、今まで過ごしてきたか知らないくせに』
「知るわけないじゃないですか。
こんな高いところから落ちてぐちゃぐちゃになったご遺体を片ずけるのは俺らですよ。
それが嫌だとは言わないけど、死ぬ時は綺麗なままがよくないですか？」
死んでやる。
こんな汚い世界から、離れてやる。
自分の遺体がどんな姿になってようと関係ない。
後ろに倒れるように、柵から手を離した。
落ちるという感覚を、肌で感じて目を閉じた。
人生で最初で最後のバンジージャンプ。
人生で最初で最後の大きな決断。
人生で最初で最後の開放感。
私、来世ではもっと色んなこと経験したいな。
しばらくすると、その落ちるという感覚が感じられなくなり目を開いた。
私は何故か、飛び降りたはずの屋上に戻ってきていた。
「ま、俺が見てる限りあなたは死ねませんよ。名前は？」
『…A』
「Aさん。あなたが死のうとする度に、俺が助けます。」
『余計なお世話』
「ヒーローってそんなもんです。どうでした？命綱なしのバンジージャンプは。」
「さ、降りましょうか」
ホークスに肩を支えられて、屋上から飛び出した。
不安定でフラフラと飛行する。
「あちゃ、さっきの飛び降り自 殺阻止しようとして羽使いすぎちゃいました。」
…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 14人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ななし | 作成日時：2023年1月13日 11時
