四拾九 ページ21
今にも泣きだしそうな震える声で勘九郎の名を呼ぶAを見て、勘九郎は困った顔をする。
AもAで、泣かないように我慢するが、それでも大好きな先生が目の前にいて、自分が早花咲組からいなくなる時まで硝達以外で一緒にいてくれた人で。
滲む瞳は、今にも大粒の涙が零れそうである。
「何年ぶりっスかね。こうやって話すのも」
そう言ってAに近ずいた勘九郎は下を向いていたA頭をゆっくりと撫でる。
まるで、小さい子供をあやすように。
そっとそっと、出来るだけ優しく。
そして、勘九郎からすれば幾分か小さい身体を壊れないように抱きしめた。
あの日のように。
『もう、泣いても良いんだよ』とでも言っているかのように。
早花咲組でも、昔やってもらった事のある行動にAは、またジワリと涙が滲んで前が見えない。
懐かし体温と、心音にAは声を押し殺して泣き始めた。
『どうやったら、認めてくれるんだろう』
『ろくろ達が居るけど、やっぱり家族からの愛が欲しい』
『もっと、私を心配してよ』
『私を見てよ』
ぽろぽろと零れる涙と共に出て来る小さな声で紡がれる言葉にも、Aの苦しみ、悲しみが滲んでいる。
心の中に押し込んだ小さな小さな思いや言葉は、年を重ねるほど大きくそして増えていき爆発しそうになる。
昔、Aが早花咲組にいたころ一度だけ爆発したことがあった。
その時は、呪力が暴走し硝達式神にも大きな影響を与えた。
自我を失い、体に蓄積されていた呪力が放出され念の為貼られていた結界もろとも部屋を大破しそうになった時今と同じ様に勘九郎かAを落ち着かせるために抱きしめたのだ。
次第にAは落ち着きを取り戻し始めた。
勘九郎の狩衣を少し引っ張り『もう大丈夫』だと知らせる。
Aの合図が分かったのかゆっくりと抱擁をほどいた勘九郎は、目元が少しだけ赤くなっているAに少し笑う。
『嗚呼、この子はまだあの時のままなのかもしれない』
自分がした過ちを思い出させてくれる存在。
早花咲組唯一の生き残り
水度坂勘九郎最後の
そんな彼女に、『もう二度と会いたくなかった』なんて思っていたことが知れたら、彼女は俺をどんな風に嫌悪するのだろう。
ラッキーアイテム
ラベンダーアメジスト【愛を守り抜く石】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 82人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
果口 陽暉(プロフ) - ななしさん» 年表を三章にて書いたのでよかったらどうぞ！ (2017年11月26日 14時) (
レス) id: 17a8e4b861 (このIDを非表示/違反報告)
まとい(プロフ) - 楽しみを毎日糧に生きていきます(笑）更新頑張ってください！ (2017年11月11日 15時) (レス) id: 013c4e821a (このIDを非表示/違反報告)
果口 陽暉(プロフ) - まといさん» 了解です！そうしますね。毎回助かってます！！！次の楽しみにしててください！！！！ (2017年11月11日 15時) (レス) id: 17a8e4b861 (このIDを非表示/違反報告)
まとい(プロフ) - そうですねー…。方言難しいので、分かるところは方言にして、ん？これは方言か？っていうやつは標準語にしたらいいと思います！ (2017年11月11日 15時) (レス) id: 013c4e821a (このIDを非表示/違反報告)
果口 陽暉(プロフ) - まといさん» はい、(人''▽｀)ありがとうございます！方言わかんないんでどうしようかなと。わかんないところは標準語の方が良いですかね？ (2017年11月11日 15時) (レス) id: 17a8e4b861 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：睡魔最強説 x他1人 | 作成日時：2017年7月15日 23時
