陽だまりのきみに 【佐野玲於】

ほんとうの ページ9

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帰ろうと思った、
家に帰って泣こうと思った、



…だけど




｢お客さま。｣


A｢…え？｣


｢アオイさんが、お客様をお呼びです。｣


A｢アオイさん？｣


｢どうぞ、裏口まで案内します。そちらからお入りください。｣




言われるがまま、黒いスーツのお兄さんについていく



…ここ。わたしが3年前に入った路地だ。


あの時と変わらず、黒い壁とゴミ箱があるだけ。




裏口から入って、誰もいない部屋に通された


キラキラした広い部屋に
シャンデリアとか、大きい鏡とか、
ドラマみたい。



黒い革のソファーにすわって、
さっきのお兄さんが出してくれたお水を飲む



アオイさんがお呼びです。って
どういうこと？


アオイさんって、誰？
どうしてわたしのこと知ってるの？




そんな事考えてたらドアが開いて、
入ってきたの、レオくんだった。




A｢…レオくん？｣



A｢…アオイさんは？｣



レオ｢店ではアオイって名前なの、おれ。｣



じゃあ、レオくんはあのときわたしに
ほんとうの名前教えてくれてたんだ。



レオくんと、3年ぶりに話してる
静かな空間のなかで、
わたしすごくドキドキして


ガラスのテーブルに写るレオくんのことぼーっと眺めてた。



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