黒姫と黒王子【及川徹】

episode ページ49

繋心side


Aのことは家が近所で小学生の頃から知っていた


家が道場で小さな頃から格闘技に親み
県賞を取るほどに熱心だった


しかしアイツの母親が亡くなると
忙しかった父にかまってもらえない寂しさからか
格闘技からも離れ家族にも心を閉ざすようになっていったという


中学に上がってから他校の男子と警察沙汰になったのをきっかけに
アイツの素行不良はエスカレートしていった


あいつの兄貴とは親しかったこともあり見かける度に
やれ声をかけているうちにAも少しづつだが俺には懐くようになった


繋「高校生になってようやくまともになったのによ・・・。」



中学時代にできた友達の存在もあって

中学卒業と同時にアイツは変わった。



「水木とね、一緒にいても危なくないようにしたいの
　でも、今の自分じゃだめだと思うから・・」



アイツは家から離れた青葉城西に進学を決め
かつて呼ばれた「黒姫」という通り名の届かない場所へ行き、新たな生活を始めた。


高校生になってからのAは、普通の女子高生といえなくもなかった


が、生まれついての性なのか、才能か。


元々「姫」なんて文字が付くぐらいだ


その見た目もあって拳を封印したアイツは
女としての魅力が十分な存在になっていた。



ガキだと思っていたAが
心を開き、俺に懐いて過ごしているうちに
『恋愛』に似た方になっていった。



それはお互いがどちらともなく



付かず、離れず



でも、高校生活を満喫しはじめたアイツのそばに
このままにいることが良いのか俺は悩み始めた＿＿



高校生には高校生らしい恋愛ってもんがあると俺は思うわけで
青春ってもんは２度は訪れない

アイツにもアイツの今を生きてほしいと思った




俺は爺さんの入院をきっかけに
Aから少しづつ距離を置くようにした



最初はアイツも戸惑っていたようだったけど
元々の不器用さもあってアイツから甘えてくることもなかった



そこにつけ込んで、俺は突き放した



アイツにはアイツの人生がある＿＿＿


＿＿俺はそれを言い訳にしたんだ
　 大人ってのはずるいもんだ



あの日

久々に会ったAは相変わらずの懐っこい笑顔で俺の前に現れた

良い高校生活を送っていると感じて
巣立ったようで少し寂しさもあった反面、嬉しさもあった。



なのに・・余計なことしてくれるなよ＿＿＿


黒姫と黒王子2【及川徹】に続く

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