黒姫と黒王子【及川徹】

20話 ページ20

Aside


休憩の開けた練習を少し見て
及川の足が大丈夫そうだったのでそのまま帰ってきた。





ーガチャ・・・



「ただいま。」


返事のない部屋の電気を点ける。


＿にゃーん。



足元にスリっと体を擦り付けて、甘い声を上げる同居人。


「ただいま。タビ♪」


柔らかい黒い毛並みを撫でる。


「いまご飯あげるからね。」




＿＿ブーッ＿ブーッ＿



ケータイが震えているのに気づいて画面を見る


＿＿＿父さん。



少し戸惑って、通話を押した。



「・・・もしもし？」




「Aか。今日から３年だろ？
　春休み帰ってこなかったから心配でな。」



受話器越しに優しい声がする。



「あぁ、ごめん。タビがいるから帰るの微妙かなと思って。」



待ちきれないと言わんばかりに足元にスリ寄る体を避けながら
棚からカリカリを出しお皿に盛る。



「なんだよ、毛玉も連れてくればいいだろうが。
　まぁ、いいけどよ。つーかお前。
　最近絡まれたりしてねーだろうな？」



「うん、してないって。水木もいるし心配しないで。」



「そうか・・・」

そういって受話器の向こうからため息が聞える。




「とにかく、たまには帰って来い。
　道場が忙しくて俺は行けねーからよ。
　娘の一人暮らしを心配しねー親なんていねーんだからな。」




ホント、心配性だな・・・。でも父さんはやっぱり優しい。




「うん、そのうち帰る。じゃあね。」




ハグハグいいながらご飯を食べるタビの横に座って頭を撫でる。




「タビ、お父さんが毛玉も一緒に帰って来いだって。」



＿にゃん。





「じゃー今度キャリー買いに行かなきゃね。」

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