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─────ジャスミンの香りがする。


三日月の晩であった。

Aはいつの間にか眠っていて
いつの間にか目を覚ました。

甘い、唯々ひたすらに甘いジャスミンの芳香が
くらくらするくらいに漂っている

一瞬自分がどこで何をしているのかわからなかった
なにか、悪い夢を見ているような気がして
気持ち悪かった


「けい、ご、」


喉の奥から吐き出すように恋人の名前を呟くと
布団を覆う影がくるりと横を向く。


「アーン、起きたのかお前」

「景吾。」


赤いランプが自分の裸体を、と言っても胸上のみを
照らしていることにそのとき漸くAは気が付いた。

乱れた黒髪は枕の上に投げ出されベッドの端まで
永遠と波を打っている。

下着は上下ともにベッドの下に落とされ、
いつも髪を止めているリボンも服に纏わりつき
原型を留めていない。

きっと、顔を赤らんで、唇は半開きで、とても
見られない酷い顔をしているに違いない。
だがAにそれは至極どうでもいいことだった。


「昔の....夢を見たわ、」

「ほう?」


赤い灯火に照らされ紫色に光る瞳を跡部は
そっと細めAに顔を近付けた。

雪のように真っ白な彼女の肌が跡部の中のなにか、
得体の知れぬものを刺激しているような気がしたけれど。


「とても...幸せだった頃の、
私の人生の中で一番貴方のことが嫌いで、
同時に貴方のことが好きだったときの夢、でも」

「夢の中の私は幸せそうに綻んでいるのに
何故か悲しくて」




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2.→



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愛美(プロフ) - とっても面白いです!続き楽しみにしてます! (2018年4月22日 9時) (レス) id: dde960ea55 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年1月10日 22時

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