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四十三 ページ1

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夏の終わりと秋の始まりを彩る少し淵の
色褪せた桔梗がふわりと秋風に揺れた。

葉月の下旬頃、残暑こそ残っているものの
山奥の学舎は麓の町とは比べ物にならない程
涼しく過ごしやすい

然しその所為で既に学園に戻っている生徒や
新学期の準備をする教員は蚊を一とする
害虫に些か悩まされていた。


「失礼致します」


そんな日常も束の間、

するりと微かな音を立て襖が滑る。

Aの澄んだ瑠璃色の瞳が書院造の部屋の
中心に佇むその耄碌した姿を射抜いた。


「戻ったか」

「はい、ただいま」


どれ、今茶を用意させよう

当然のようにそう言った大川に
Aは静かに首を振る。


「その必要はありません」


目を細め、麗しく微笑む彼女の様子を見て
大川は最初こそ眉尻を下げたものの
結局「そうか」と座り直した。


「して、収穫はあったのかの?」

「...その前に一つお話を宜しいでしょうか」

「主のその人に対する態度は育ち故か」


大川は嫌味のように言い放つ。

育ち故、とは一体どういった意味として
受け取れば良いのだろうか

彼女は刹那そんなことを考えた。

Aの言葉遣いは違和感がある程整っているのだが、
どうした訳か正直過ぎるあまり目上の人物に
対してでも辛辣と思われる台詞が生まれることがある。

恐らく大川はそれを指したのだろう。


「まあ、失礼な」

「やはりそのようじゃな」


吐いた言葉とは裏腹に表情は何かを懐かしむような、
若しくは面影が残っていることを喜ぶような、

そんな様子が二人には見られた。




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四十四→



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作者名: | 作成日時:2017年2月28日 22時

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