愚かな ページ32
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「柚木、まだ帰ってなかったのか」
職員室から帰ってきた、土籠先生。
その視線の先にいる、彼が言う。
「手当てしてもらおうと思って」
その傷を見て、溜息が漏れる。
手当ももう、慣れたものだ。
傷を付けられている柚木も、慣れていると笑った。
そんな顔を、させたい訳じゃないのに。
月、着いたらしいな。
土籠は、至って明るくそう言った。
柚木の顔色は冴えなかったが。
「いっこだけ、ワガママ聞いて?」
そう言うと柚木は、土籠に、石を渡した。
大切なんじゃなかったのか?と彼が問うと、
柚木は、
「もうどこにも行かないって決めたから」
実のところ、それは嘘だった。
月の石を持っているだけでは、
何にもならないと月面着陸で気づき、
なんだか、これを信じている自分が、
愚かな気がしてきたのだ。
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「俺は、宇宙飛行士になれない。
あの石を持っていたって、特別なんかじゃないんだ」
彼はそう言いきった。
彼がそう言うなら、私が言ったことも嘘になる。
『絶対、絶対叶うよ』
それに、彼女がかけたおまじないも、
叶わなかったということになる。
彼はそれを否定して、何を伝えたいというのだろう。
「俺は、中野の言葉に、甘えてたんだ」
私は少し前に、彼に告げた言葉を思い出した。
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『普くんの好きにしたらいいんだよ』
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三人称?練習中です。
明日には4000ヒット行きそうですね!
感謝記念でなにかしたいな……
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めーぷる - すごく感動しました。どうしよう、泣きすぎてパーカーの袖グシャグシャ・・・これからも頑張ってください。何か、素敵な作品をありがとう!って感じです。(語彙力が…) (2019年11月8日 11時) (レス) id: f01d8b6a59 (このIDを非表示/違反報告)
#花シカ - 正直、素晴らしいにも程があると思う…才能の塊… (2019年10月7日 22時) (レス) id: d50ff21fc0 (このIDを非表示/違反報告)
ミルクショコラ - 泣きました。さいっこう!!これからも頑張って下さい! (2019年9月2日 21時) (レス) id: a2c6795623 (このIDを非表示/違反報告)
らて(プロフ) - もっけ太郎さん» ありがとうございます! (2018年8月13日 9時) (レス) id: b22609da49 (このIDを非表示/違反報告)
らて(プロフ) - みゃのさんさん» ありがとー! (2018年8月13日 9時) (レス) id: b22609da49 (このIDを非表示/違反報告)
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