もしもの話【地/縛/少/年/花/子/く/ん】 (ページ8)

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うどんページ8

「寧々」

いきなり、柚木君が私を見てそう言った。
さっきまでヤシロさんだったのに。
予告もなく、本当にいきなり。

「柚木君!?」

いきなり呼び捨てにされた事に、私の体温は急上昇。
頬が熱くなるのを感じる。

「えへへ。呼んでみただけ」

と、頭をかいた。
源が呼んでたからさ。って、
それは幼馴染だからなのだけれど……

「遅れた。台所借りるぜ」

と、光くん。
その手には、大きなレジ袋。
よくそんなの持てるな。ってほどに詰まっていた。

「三葉うどんと雑炊どっちがいい？」

どこからか取り出したエプロンを腰に巻きながら言う。
常に持参しているのかな？

「なにさーいきなり。もしかして光くん僕のことが
……どっちかって言うとうどんが食べたいかな」

と、少し三葉君がふざけて見せると、光くんは、鋭く睨んだ。
病人なんだけど、僕……とぶうたれた。

「……源手際良すぎないかい？」

規則正しい包丁の音を聞きながら柚木君は囁く。

「あの子の生活力は凄いんだよ……」

私も中等部の頃から特訓してるんだけど、
未だに光くんには追いつけない。
家の家事は全てしているらしい。
やはり経験の差だろうか。

「はい、お待ち」

湯気が立ち上るうどん。
私が三葉君なら、目を輝かせるだろう。

「思ってたより美味しそーだけど……」

と恐る恐る箸を入れる。

「……美味しい」

と、ぱくぱくと食べた。
光くんは、誇らしげに笑う。