お見舞い ページ5
「寧々ちゃん一緒に夏祭り行かない？」
と、既視感のある紙を私に見せた。
「ごめんね、葵。私、柚木君に誘われてて」
本当なら葵と行きたいところだけど、
先約を優先しないといけない。
微かな罪悪感を胸に、私は両手を合わせた。
「そうなんだよネー。ごめんね茜さん」
と、彼は私の肩に手を置いた。
柚木君って距離感近いんだよね……
「そうなんだー」
にやっと笑って囁いた。
「また後で話聞かせてね」
私と柚木くんはそんなんじゃ無いんだけどな。
でも、彼から夏祭り誘うなんて。
脳裏にひとつの考えが浮かんだ。
柚木君って私のこと好きなんじゃ？
まあ、流石にそれはないか。
「そーいや三葉君最近来なくない？」
斜め前の席はぽっかり空いていた。
そういや、確か二日前くらいから来てないっけな。
「あー。ミツバ風邪ひいたみたい」
ミツバは風邪ひかない感じじゃない？と笑った。
いつもの生意気な態度を思い出した。
最初にあった時、私の足首を指さして笑っていたっけ……
「お見舞い行かないとね」
そんな事言ったって、多分根はいい子なんだよ。
園芸部の活動写真も撮ってくれるし。
最近三葉君が来ないから、活動写真は散々なものになっていた。
「今日俺空いてるけど……一緒に行く？」
部活は？ と聞くと、
今日は30分だけだよ。と言った。
バスケ部事情は知らないけれど、
まあ空いてるならいいや。
勿論私も空いている。
「うん。そうしようかな」
すると、後ろの席から、
「俺も行く」
と、光くん。
そういや光くん、三葉君と仲良かったな。
「剣道部の部活は？」
うっと言葉を詰まらせる。
そして曇りのない笑顔で
「サボる！」
と叫んだ。
あの……今授業中だよ？
先生が物凄い顔で光くんを睨んだ。
あちゃー。これは怒られちゃうな。
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